絵本画家・イラストレーターのおさだかずなが、おすすめの「いぬの絵本」をわかりやすく丁寧に読み解く連載企画です。
あらすじ
「ずーっとずっとだいすきだよ」は犬の”エルフィー”と人間の”ぼく”との関係を描いた、良い意味でありふれた物語です。
幼い頃から主人公の”ぼく”と一緒に大きくなったエルフィーは、自分よりも先に年老いて、死んでしまいます。
犬と暮らしている飼い主さんにとっては共感できる微笑ましい部分も、思わず目を背けたくなる辛い描写もありますが、どうか最後まで読んでいただきたい一冊です。
おすすめしたいポイント
「エルフィーは、せかいで いちばん、すばらしい犬です。」
物語の始めに主人公の”ぼく”が飼い犬である”エルフィー”をそう紹介します。
ぼくにとってのエルフィーはリスペクトしている親友でもあり、家族の一員でもある存在。でもエルフィーが”犬”であるということを、ぼくは一番良くわかっています。
人間と動物という垣根を越えた対等で特別な関係を二人は築き上げています。
エルフィーは飼い主のアクセサリーでもなければ、子供やペットのように無条件に愛情を注ぐ存在でもないのです。
だからこそ、世界中の幅広い世代の人たちに共感され、長い間愛される絵本になったのだと思います。
この絵本から伝えたいこと
大切な人との別れがもうすぐやって来るとしても、後悔や悲しみに暮れていたとしても、それでも私たちは生きていかなければなりません。
「そのために、あなたは何が出来ますか。」
この短い物語に織り込まれた作者ハンス・ウィルヘルムの強いメッセージを感じ取る事が出来ます。
決して説教臭いわけではなく、ストレートに表現されたこの絵本は、非常に悲しく、美しい作品です。
特別な存在であるエルフィーの死と真正面から向き合ったぼくのように、大切な人に気持ちを伝えるという事を、一体どれだけの人が実行出来ているのでしょう。
あなたは大切な家族や友人、愛犬に気持ちを伝えられていますか?
両親や学校の先生でも教えてくれない、大切な事を教えてくれたエルフィーは「せかいで いちばん、すばらしい犬」なのかもしれません。
いまだに世間知らずな私は、何年か後に改めてこの絵本を開いた瞬間、また違った思いを感じるのだろうと思います。
あとがき
出会いのきっかけは”国語の宿題”
私とこの本の出会いは小学校の国語の授業でした。
教科書に載っていた「ずーっとずっとだいすきだよ」を音読するという宿題をしていたのをこっそり見ていた母がとても気に入ってこの絵本を買ってきました。
当時動物を飼った事がなかった私は、いまいちピンとこない部分が多かったのですが、時々思い出したようにこの絵本を開いては、思うこと、感じることも変わっていきました。
犬を飼ってはじめてわかった、絵本の「価値」
大人になって、ひょんなきっかけからフレンチブルドッグ(名前:ポコ)と一緒に暮らしている今、この絵本を読むと毎回胸の奥が締め付けられ、ポコと一緒にいられる時間について考えさせられます。
ぜひ一度「ずーっとずっとだいすきだよ」を手にとってみてくださいね。