はじめて我が家に迎えたときは元気で可愛い子犬だった愛犬も、やがては年をとり、老化現象が見られるようになります。「老化」とは、簡単に言うと細胞が衰えること。人間の高齢者と同様に、犬も年をとると体内の代謝が衰え、動物の体の基礎となる細胞の再生が遅れたり、再生できなくなったりします。すると、体の機能が低下し、この間まで簡単にできていたことができなくなり、家族の助けが必要になることもあります。
連載「老犬との幸せな暮らしのために」では、シニア期を迎えた愛犬に健やかに過ごしてもらうための方法や共に暮らすご家族の皆さんの負担を少しでも減らす方法などをご紹介していきたいと思います。
犬の年のとり方?
犬の老化のスピードには犬種差や個体差がありますが、一般的には小・中型犬は成長が速く老化は緩やか、大型犬は成長は遅のですが老化は早く進むと考えられています。
犬の年のとり方には犬種差や個体差もあるため、この表はあくまでも目安です(※出典:小動物の臨床栄養学)
平均的な寿命は小・中型犬で15歳前後、大型犬で10歳前後と言われています。ちなみに、室内飼いの一般化(飼育環境の向上)やフードの質の向上、獣医療の発達やワクチンの普及などにより、犬の平均寿命はこの10年ほどで約3歳も延びています。大切な愛犬に長生きしてほしいと願うご家族の愛情が犬の長寿化を促しているとも言えるかもしれませんね。
一般的に老化のサインが見られるようになるのは、小・中型犬では9歳〜10歳、大型犬では7歳〜8歳、人間の年齢に換算した場合の50代の頃からです。 「うちの子はまだまだ大丈夫」と思っていても、老化は確実に進んでいます。愛犬がシニアであることを飼い主の皆さんが自覚し、愛犬の様子をしっかりと観察して、愛犬の状況を正しく把握してあげることが大切です。
愛犬の老化のサインをチェック!
老化の兆候は、体だけではなく行動や性格にも現れます。白い毛が増える、目が濁ってきた、反応が鈍い、神経質になったなど、さまざまなところに現れる犬の老化のサインに飼い主の皆さんがしっかりと気付いてあげることによって適切な対策を講じることができます。加齢によって起こるさまざまな変化をご紹介するので、まずは愛犬の老化のサインをチェックしてあげてくださいね。ただし、愛犬も高齢になるとさまざまな病気を発症するようになるので、老化のサインは病気の兆候の場合もあります。早めに診断を受けることで治療が可能な病気や進行を遅らせられることのできる症状もあるので、気になることがあれば動物病院で診てもらうようにしましょう。
“体” の老化サイン
体の変化は飼い主の皆さんが一番気づきやすい老化のサインです。しっかりと愛犬を観察してあげてくださいね。
Check! □白い毛が増えた
人間に白髪が増えるように犬も年をとるにつれて白い体毛が生えてきます。特に口のまわりから生えてくることが多いようです。また、抜け毛が見られることもあります。
Check! □太ってきた・やせてきた
基礎代謝の低下や運動不足により太ったり、消化吸収機能の衰えによりやせてしまったりといった体型の変化が生じます。
Check! □おしりが小さくなった
加齢によって筋肉が衰え、角ばった体型になります。特に足腰の筋力が低下しやすいのが老化の特徴です。愛犬を上から見たときに、上半身よりもおしりのあたりが骨ばって細くなっていたら、筋肉が落ちてきているサインです。筋力をキープするために無理のない範囲での運動を行うようにしましょう。
Check! □口臭が強くなった
年をとると唾液の分泌が減るために歯周病などにもかかりやすくなります。口臭は歯や歯茎のトラブルだけではなくさまざまな病気の兆候でもあるので、口臭が著しいときには動物病院での検査を行いましょう。
Check! □目が濁ってきた
目の病気として有名な白内障をはじめ、老犬にはさまざまな目のトラブルが起こります。目が濁っていたり、目やにが多いのは、目のトラブルのサインです。場合によっては失明する病気もあるので、早めに動物病院で診てもらいましょう。
Check! □イボやしこりができた
シニア期を迎えると腫瘍ができやすくなり、体にイボやしこりができることもあります。小さいものでもガンの腫瘍である可能性もあるので、まずは動物病院で検査をしてみることをお勧めします。
Check! □表情がやさしくなった
年をとると、顔の筋肉の緩みによって、表情がやさしい感じになります。
“行動” の老化サイン
最近そういえば愛犬の行動が変わったかも?という場合には、もしかしたら老化のサインかもしれません。
Check! □歩くのが遅くなった
年をとるにつれて後ろ足の筋力が低下し、歩くスピードが遅くなります。さらに老化が進むと、足がもたついたり、後ろ足をひきずって足の甲や指を地面にすってしまい(ナックリング)、爪が削れたり割れたりすることもあります。腰や関節の痛みが原因の場合もあるので、動物病院で診てもらうと安心です。
Check! □名前を呼んでも反応が鈍くなった
耳が遠くなり、呼ばれていることに気付いていないかもしれません。なるべく近くまで寄って声をかけてあげてください。
Check! □寝ている時間が長くなった
犬は元々睡眠時間の長い動物ですが、年をとるにつれて寝ている時間が更に長くなります。自然なことではありますが、放っておくと寝たきりになってしまうこともあるので、積極的に散歩に出かけたり生活に刺激を与えるようにしましょう。
Check! □散歩に行きたがらなくなった
ひざの関節や股関節の痛みなどによって歩くのが苦痛なのかもしれません。怪我や病気の可能性もあるので、動物病院で相談してみましょう。また、散歩をやめると筋力低下が進んでしまうため、無理のない範囲でなるべく続けてあげてください。
Check! □物や壁にやたらとぶつかる
視力が弱くなったり、足の筋力が落ちてふらつくことによって、物や壁にぶつかってしまうことも。愛犬が怪我をしないように部屋のレイアウトを見直したり、ケージなどで行動範囲を制限してあげましょう。
Check! □怒りっぽくなった・神経質になった
目や耳が不自由になったことによる不安感や関節や体の痛みから、飼い主さんに対して噛んだり、吠えたり、あるいは神経質になることがあります。今まで以上にコミュニケーションを図り、温かく見守ってあげるようにしてください。
Check! □他の犬や人と交流しなくなった
周囲への関心が薄れて面倒になってしまったのかもしれません。若さを保つためにも、仲の良い犬とだけでも交流を持つようにしましょう。
Check! □ご飯をあまり食べなくなった
歯が痛い、口を開けずらい、首を曲げずらいといった理由から、食欲がなくなってしまうこともあります。ご飯をふやかしたり、とろみをつけてあげたり、台座を使ってあげるなど、愛犬がご飯が食べやすくなるような工夫をしてあげましょう。
Check! □トイレの回数が増えた
高齢になると一度に出せる尿の量が減るために排泄の間隔が短くなります。歩くのが困難でトイレに間に合わず失敗してしまうこともあるので、普段過ごしているベッドの近くなどにトイレを置いてあげましょう。あまりに失敗が増えてきた場合には、目が届かない時間にはオムツを使うこともお勧めします。
いかがでしたか?愛犬の老化のサインに早く気付いてあげることができれば、状況に応じたケアをしてあげることも可能となります。日々の愛犬とのコミュニケーションのなかで是非チェックしてあげましょう。また、犬が年をとるスピードは人間よりも遥かに早いので、特にシニア期に入ってからは、半年や3ヶ月に一度は動物病院での健康診断を受けるといったことも検討してみてくださいね。