動物への負担が少なく日帰りも可能な「腹腔鏡手術」とは?|自由が丘動物医療センター 訪問記(前編)

※こちらの記事の一部には、手術中の臓器や血液の画像や映像が含まれます。苦手な方は閲覧にご注意ください。


上品で落ち着いた街並みが女性を中心に支持され、住みたい街ランキングでも上位にその名を連ねる自由が丘。街全体での緑化運動や環境への配慮を徹底していて、愛犬家の多い街としても知られる自由が丘に新しい動物病院「自由が丘動物医療センター」がオープンしました。

「自由が丘動物医療センター」は、株式会社ベックジャパンの運営する3院目の動物病院です。東京近辺にお住まいの愛犬家の皆さんにとっては、六本木ミッドタウンや代官山T-SITEに店舗を構える「GREEN DOG(グリーンドッグ)」併設の動物病院である「GREEN DOG 東京ミッドタウンクリニック」と「代官山動物病院」に続く3拠点目とお伝えしたほうがイメージしやすいかもしれません。

「自由が丘動物医療センター」は、東急東横線と大井町線の交差する自由が丘駅から歩いて10分ほどの目黒通り沿いに位置します。動物を連れての来院なので、車でのアクセスの良さに配慮した立地です。

自由が丘動物医療センターが導入した「腹腔鏡手術」

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株式会社ベックジャパン代表の金井 孝夫氏(写真左)と 獣医師の朴 永泰先生(写真右)。

この日は、獣医師の朴 永泰先生が中心となって導入した「腹腔鏡」を使った避妊手術の見学をさせていただきました。

朴 永泰先生のプロフィール(「代官山動物病院」公式サイトより)

【経歴】

  • 2008年 北里大学卒業
  • 2008年-2011年 ルカ動物医療センター 勤務医
  • 2011年-2014年 エール動物病院 副院長
  • 2011年-2012年 北摂夜間救急動物病院 非常勤勤務医
  • 2011年-2014年 ネオベッツERセンター 非常勤勤務医
  • 2014年-2015年 エコーペットビジネス総合学院 講師
  • 2009年-現在 北里大学小動物第2外科学研究室 研究員
  • 2015年- 代官山動物病院 院長

【所属学会】

  • 日本内視鏡外科学会
  • 日本獣医麻酔外科学会
  • 日本獣医がん学会
  • 日本獣医循環器学会

「腹腔鏡手術」では、まず麻酔をして腹部の毛を剃った後に、腹部に3ヶ所ほどの小さな穴を開け、炭酸ガスを入れてお腹を膨らませます。腹部に開けた穴から内視鏡や鉗子を挿入し、モニターに映し出された患部を見ながら手術を行います。

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まずは麻酔を行います。
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腹部の毛を剃り、消毒します。
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腹部に穴を開けるための器具や炭酸ガスを送り込むための器具、内視鏡や鉗子などを整理します。使用する器具の多さも「腹腔鏡手術」の特徴です。
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「自由が丘動物医療センター」では、3人1チームとなって「腹腔鏡手術」を行います。執刀医の朴 永泰先生(手前左)と助手を務めた獣医師の寺村 靖史先生(手前右)、モニタや各種機械の操作を担当する動物看護士の多賀 ゆりえさん(奥)。
※以下の動画の一部には、手術中の臓器や血液の映像が含まれます。苦手な方はご注意ください。

モニタに映し出された患部を見ながら内視鏡や鉗子を操作します。モニターを見ながら行う手術はさながらテレビゲームのようで、北米にはWii Uを利用したトレーニングシステムもあるそうです。
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両サイドに設置されたモニターのうち、写真の朴 永泰先生の後ろ側のモニターの下に炭酸ガスを送り込む装置や光源、血管シーリングシステムといった「腹腔鏡セット」が置かれています。
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無事、卵巣と子宮の摘出が完了しました。

「腹腔鏡手術」のメリットは?

通常の開腹手術では数cmの傷口が出来るのに対して、「腹腔鏡手術」では2〜5mm程度の穴を3ヶ所ほど開けるだけですむため、動物への負担が少ない手術と言えます。手術中に臓器や靭帯を引っ張る必要がなく、動物達にとっての痛みも少なくて済みます。術後の回復も早いため、日帰りでの手術が可能となることも「腹腔鏡手術」の大きなメリットです。

また、拡大された鮮明な画像を見ながら手術を行うので細かな血管がよく見え、精緻な手術を行うことができます。手術中に臓器が乾かない点や落下細菌を防げるという点も利点として挙げられます。

「腹腔鏡手術」のデメリットは?

「腹腔鏡手術」のデメリットとしては、モニターを見ながらの手術となるので触感がなく、執刀するためには相応の技術や経験を要することが挙げられます。また、「腹腔鏡手術」のためには高額な設備が必要なので、まだまだ受けられる動物病院の数が少なく、開腹手術と比較すると手術費用も高くなるのが一般的です。

なお、開腹手術と同様に「腹腔鏡手術」にも全身麻酔が必要となります。特に、心臓や肺に問題がある動物では、炭酸ガスをお腹の中に注入する影響から注意深い麻酔が必要となります。また、不意な出血などに対応するために、開腹手術ができる獣医師が執刀することが前提となります。

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摘出後には、再び内視鏡を使って患部に異常がないかを丹念にチェックします。
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内視鏡や鉗子を挿入するための穴を開けたところを縫合します。
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体を暖めてもらい、しばらくすると麻酔から覚めました。無事、手術成功です。
術後の様子も順調です。「腹腔鏡手術」は動物の体への負担が少ないので日帰りも可能になります。

動物の体への負担も少なく、メリットの多い「腹腔鏡手術」ですが、国内の獣医療の世界ではまだまだマイナーな存在です。

次回、今回の手術を執刀した獣医師の朴 永泰先生と株式会社ベックジャパン代表の金井 孝夫氏から伺った「腹腔鏡手術」を導入した理由をお伝えします。