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アニマル・ドネーション代表の西平さんを訪ねた我々4人。
日本国内の「動物福祉の現状と課題」に関するお話に続いて、西平さんのお話は「動物福祉」に関して先進的な国や地域の紹介へと移っていった。
動物先進国 ドイツ
出典:http://www.tierschutz-berlin.de
(西平さん)「動物福祉」の先進国としてまず最初にご紹介したいのは、ドイツです。ドイツには「ドイツ動物保護連合」という団体があり、全国に500箇所のシェルターを持つ「ティアハイム」という動物保護施設をはじめとしたネットワークのバックアップをしています。「アニマル・ドネーション」立ち上げのときにも参考にしました。「ティアハイム」での譲渡率は98%を誇り、引き取り手のいない動物達は終生飼育されています。年間8億円の運営費は会員や地域企業からの寄付によってまかなわれていて、犬1頭に1部屋、床暖房や犬専用の庭も備えられているんですよ。
(AZI&浜中氏)変な飼い主のところに行くより、よっぽど快適そうだね(笑)。
(西平さん)そうですね(笑)。でもドイツでは、そもそも簡単に動物を飼うことができないんです。未成年は動物を飼えないし、動物を飼うための家の広さや散歩規定といったことも国が定めています。犬を飼うためには、70ユーロから140ユーロの犬税も払わなければなりません。
(AZI)浜ちゃん、ドイツだと犬飼えないんじゃない(笑)?
(浜中氏)そんなことないっすよ!
ハワイアン ヒューメイン ソサエティ
出典:http://www.hawaiianhumane.org
(西平さん)次にご紹介したいのが、ハワイにある「ヒューメイン ソサエティ」のシェルター。ドッグランは一般にも開放されていて、「とにかく、明るい!」というのが特徴です。
(西平さん)ハワイアン ヒューメイン ソサエティは、考え方にも特徴があります。例えば、飼い主がシェルターに犬を持ち込むと、スタッフは「新しい飼い主を探せて、この子は幸せだね!」って言うんです。必ずしも1頭の動物を1人の人が終生飼養できなくても、「流動性を高める」ことで、新しい飼い主によって幸せになれば良いのではないか、という考え方なんです。
オレゴン ヒューメイン ソサエティ
出典:http://www.oregonhumane.org
続いてご紹介いただいたのは「オレゴン ヒューメイン ソサエティ」。アメリカでは、動物にとってもスタッフや地域住民にとっても衛生的で安全、そして人道的なシェルターの管理や運営に関する「シェルターメディシン」という研究が獣医療の一分野として確立しており、「オレゴン ヒューメイン ソサエティ」の施設も「動物に配慮した造り」が特徴なのだそうだ。
動物先進国と日本との違い
(西平さん)ドイツ・イギリス・フランス・オーストリア・スイスなど、ヨーロッパの国々には動物福祉の精神が根付いています。ただ、それらの国と日本とでは動物観の違いもあり、先進国では過去の反省の上に現在の充実した福祉が作られたという背景もあるのです。元々、動物に対して人間と平等であり、ありのままを受け入れるという考え方だった日本に対して、狩猟民族であったヨーロッパでは、動物は人間の従属物であり命をコントロールしても良いものという考え方でした。そのため、動物を苦しめて楽しむ娯楽や虐待も生まれ、それらを見た上流階級の人達が主導して動物愛護の活動を始めていったのです。
(AZI)そういえば、日本には「生類憐みの令」というのがありましたね。
(西平さん)そうそう。徳川綱吉は誤解されて伝わってしまっていることも多いのですが、「生類」というのは人も動物も全ての生を指していて、捨て子や捨て老人、捨て牛馬を禁じるところから、動物を見世物にしたり娯楽のために殺生することを禁じるなど、生を害する姿勢を抑制するためのものだったのです。私、綱吉のファンですよ(笑)。
変わり始めた「行政の在り方」
(西平さん)現状では動物福祉の先進国と比べると遅れてしまっている日本ですが、少しずつ変わってきています。日本では100以上の施設が国民の税金で作られています。これまでの施設は、引き取った犬や猫を「殺処分」するための施設でした。それが変わってきているのです。
出典:http://doubutsuaigo.hinokuni-net.jp/
(西平さん)代表的なのが、熊本市動物愛護センター。「殺さない行政へ」というスローガンのもと、平成14年には400頭弱の犬猫が殺処分されていたのを平成21年度には犬1頭、猫6頭まで減少させました。神戸市や東京都の動物愛護センターでも、民間団体や譲渡団体との連携でレスキューを進める動きをしています。また、横浜市には「殺処分機を置かない」動物愛護センターが誕生しました。奈良のうだアニマルパークや長野動物愛護センターでは、動物とのふれあいや子ども向けの啓発事業などを積極的に取り組んでいます。いずれも、中で働く職員の方々の声や、思いから変わっていきました。
動物に優しい国へ
(西平さん)「動物福祉」について、保護活動の活性化や法規制の更なる適正化、寄付文化を根付かせていくことなど、日本にはまだまだ課題が多いのが現状です。ただ、先程ご紹介した行政の取り組みや、「預かりさん」といったかたちや、搬送やお掃除だけのお手伝いといった様々な形式での保護活動の多様化など、少しずつ変わり始めてきています。そのなかで、きっと皆さんのようなアプローチも必要だと思います。もしかしたら、皆さんのような方々が「動物愛護」に興味を持って一歩を踏み出してくれているのも、変化の一つの現れかもしれませんね。日本が「動物に優しい国」へと変わるまで、お互い頑張りましょう。
(浜中氏)よし!ヤル気出た!
(AZI)オレ、元々ヤル気だから(笑)。
(浜中氏)僕だってそうですよ!
(一同)笑。
最初は、ちょっとした思いつきだった。
だが、その直感を信じて一歩目を踏み出すことによって、こうして西平さんとも出会うことができた。
「動物福祉」の先進国も、変化を始めた日本の行政も、最初は誰かの小さな思いから始まっている。
きっと私達のような小さな一歩が重なりあうことによって、大きな変化を生み出していくのだろうと思う。
自分達一人一人にできることは小さいかもしれない。それでも変化を信じて進んでいこう。
我々4人は、そう決意したのだった。
AZI(アジ)|プロフィール
グラフィティアーティスト・アートディレクター
「グラフィティ=落書き」ではなく、「グラフィティ=楽描き」というコンセプトのもと、ジャンルの壁を越えて様々な分野で活躍中のアーティスト。多数のフェスでのライヴペイント、アーティストやスポーツ選手とのコラボレーション、ミュージックビデオや映画でのアート参加など多方面で活躍中。最近では、オーストラリア出身のポップパンクバンドファイブ・セカンズ・オブ・サマー|5 Seconds Of Summer、通称5SOS(ファイブ・ソス)の来日公演におけるメインビジュアル制作など、活動の幅を世界に広げている。詳しいプロフィールや作品はこちらから