8月26日(金)から27日(土)にかけて、東京大学本郷キャンパスにて開催された『アニマル・ウェルフェア サミット2016 ~どうぶつと人の笑顔のために~』にお邪魔してきました。
初日26日(金)にはリオデジャネイロ・オリンピック閉会式の「フラッグハンドオーバーセレモニー」から帰国したばかりの小池百合子都知事も登壇し、サミットを主催した一般社団法人「クリステル・ヴィ・アンサンブル」の代表理事である滝川クリステルさんがインタビューを行いました。
公約として初めて「東京での殺処分ゼロ」を掲げた都知事である小池知事は、環境大臣や自民党動物愛護議員連盟の会長を務めていたこともあり、付け焼き刃ではない知識とご自身の考えに基づいた受け応えが印象に残りました。
握手を交わす滝川クリステルさんと小池百合子都知事(画像出典:https://www.facebook.com/)
そして、東京オリンピック・パラリンピックの開催される2020年までに日本での殺処分ゼロを目指す滝川氏に対し、小池知事は東京都では2020年よりも前倒しで殺処分ゼロを実現し、ペットと共生する社会を作る良い例を示せるようにしていきたいと宣言され、会場は拍手に包まれました。
さて、それでは今回のサミットのタイトルにも掲げられた「アニマル・ウェルフェア」とはそもそも何なのか?ここからは「殺処分ゼロ」を目指す上でも重要な概念となる「アニマル・ウェルフェア」をテーマとした「アニマル・ウェルフェア講座」の模様をお伝えします。
「アニマル・ウェルフェア」の基礎をなす「5つの自由」
2日目の27日(土)に開催された「アニマル・ウェルフェア講座」には、滝川クリステルさんの他に「アニマル・ウェルフェア」の先進国で活躍するお二人が講師として登壇しました。講師のお二人は、スウェーデンでドッグ・ジャーナリストやフォトグラファーとして活躍する藤田りか子さんと、ドイツで動物保護専門の獣医師やドッグ・ジャーナリストとして活躍するアルシャー京子さん。
左からアルシャー京子さん、滝川クリステルさん、藤田りか子さん(画像出典:https://www.facebook.com/)
自己紹介に続き、動物愛護でもなく動物福祉でもなく、あえて「アニマル・ウェルフェア」と謳っているという滝川クリステルさんからのバトンを受けて、講師のお二人から「アニマル・ウェルフェア」に関する説明が行われました。
まずは「アニマル・ウェルフェア」の基礎をなす理念である「5つの自由」について。「5つの自由」とは、1960年代に「アニマル・マシーン」として酷使されていた産業動物(家畜)の福祉増進を目的として、イギリス政府の委嘱により設置されたブランベル委員会により勧告された理念が始まりです。当時は「どんな条件の下であろうと、家畜には少なくとも動作における5つの自由が保障されるべきである。その自由とは、楽に向きをかえることができ、自分で毛並みをそろえることができ、起き上がり、横たわり、四肢を伸ばすことのできる自由である」という内容でした。現在では産業動物(家畜)だけではなくペットとして暮らす犬や猫などの家庭動物にも範囲を広げた新しい「5つの自由」として、以下の自由が唱えられています。
5つの自由
- 飢えと乾きからの解放
- 肉体的苦悩と不快からの解放
- 外傷や疾病からの解放
- 恐怖や不安からの解放
- 正常な行動を表現する自由
「5つの自由」のうち3つ目までは人間である飼い主にとっても理解しやすいのですが、4つ目以降は難しくなるとアルシャー京子さんは解説します。「恐怖や不安からの解放」と聞くと、もちろんかわいそうだから解放すべきと感じるかもしれませんが、恐怖や不安を感じていることに飼い主が気づかなければ解放してあげることはできません。同様に「正常な行動を表現する自由」というのは「正常な行動」が何であるのかをまず知らなければ判断できないとアルシャー京子さんは指摘します。おそらく日本で最も理解が進んでいないポイントであり、「5つの自由」の実現のためには犬や猫の生態を飼い主が理解することが大前提となるのです。
続いて、「アニマル・ウェルフェア3要素」が紹介されました。こちらは「5つの自由」の実現のために動物にとって必要な3つの要素にフォーカスして表しています。
アニマル・ウェルフェア3要素
- 健康と体の機能:疾病と障害のない暮らし、エサ、水、寝床
- 感受性:痛みと苦悩の回避、ポジティブ感情の経験
- 自然な生活:体の動き、社会性行動、探索など
こちらも1つ目は人間の生活においても同様なので理解しやすいのですが、2つ目と3つ目を理解するには、動物の感情や生態に関する理解が前提となります。
ヨーロッパ諸国における「アニマル・ウェルフェア」と日本における「動物愛護」
ここで、動物先進国であるドイツ・スウェーデン在住のお二人の講師に対して、滝川クリステルさんからヨーロッパ諸国における「アニマル・ウェルフェア」の現状について質問が投げかけられました。
アルシャー京子さんによると、EU加盟国においては「5つの自由」に基づいたEU法が存在し、加盟各国に対しても「5つの自由」を国内法へ反映させることが推奨されています。ただし、一言にヨーロッパと言っても国ごとの法整備などにおけるレベルの違いは大きく、国内経済が安定していない東欧の国々や地中海沿岸の「美食」の国ではまだあまり整備されておらず、北欧スウェーデンやドイツ、フランスといったスイス・アルプス以北は比較的進んでいるそうです。
続いて、日本の「動物愛護」についてどう思うかという質問に対して、アルシャー京子さんは「動物愛護」という概念は日本特有のものであり、「愛護」という言葉には「人からの愛情」という概念が含まれるために「人の主観」が入ってしまうと指摘します。アルシャー京子さんが「正直苦手…」というカエルを例に挙げて、そこに愛情は無くても虐待したり無駄な殺生はしない、最低限守ることはできるというのが「アニマル・ウェルフェア」であると解説されました。
狩猟が盛ん(10人に1人ほどが趣味として狩猟を楽しむ)という側面も持つスウェーデン在住の藤田りか子さんは、スウェーデンでは狩猟においても倫理を重視し、どのように殺すのか、手負いになった動物は必ず仕留めなければならないといった内容が狩猟法に織り込まれていると言います。これは、生きている間に動物がどのように生きていけるかに重点が置かれていること、すなわち「アニマル・ウェルフェア」の表れだそうです。
アニマル・ウェルフェアに則った「殺処分ゼロ」
ここで滝川クリステルさんから日本の「殺処分ゼロ」に関しての問題提起がなされました。
「殺処分ゼロ」を目指すなかで、ゼロという数字だけを追ってしまうとそれによって歪みが生じるという問題も起こっていると滝川クリステルさんは指摘します。ゼロだけを追い求めて、苦しんでるまま引き取るのではなく苦しみを避けさせるために安楽死を選んだほうが良いのではないか、そういうことが「アニマル・ウェルフェア」に則った「殺処分ゼロ」ということですが、今の日本の殺処分のありかたというのは例えば保健所に収容された場合、まず暑い夏には冷房で冷えた場所もなく本当に過酷な暑いなかで収容されて一週間も閉じ込められている、寒い冬でも何も毛布もないコンクリートの冷たいところで殺されるまで飼い主を待っている、それは全く「アニマル・ウェルフェア」に則っていない。殺処分数が多いのも問題ですが、そこが日本では大きな問題であると。
そしてアルシャー京子さんも同じく、動物達が生きている限り、意識がある限り快適な自然な生活を送らせてあげることが「アニマル・ウェルフェア」としての大きなポイントであり、それは全ての動物に関してですから、家畜から家庭の犬や猫まで全ての動物において考えるべき大きなポイントであると応えました。
犬とのコミュニケーション
続いて身近なテーマとして、滝川クリステルさんから、いまだ暑い夏でも日中に散歩をしたり、屋外に首輪をして放置していることもある日本での犬猫の飼われ方についてどう思うかという質問が投げかけられました。
犬との遊びを使ったコミュニケーションやアクティビティに関する造詣の深い藤田りか子さんからは、ただ排泄のためといった風にダラダラと散歩するのではなく、犬との協調作業である散歩を通じたコミュニケーションによって犬への刺激を与えることで犬のメンタルの活性化に繋がるという提案がされました。それに対してアルシャー京子さんからは日本の「散歩」という言葉がいけないのかもしれないという意見が。人間の「散歩」というとゆっくりとのんびり歩くイメージなので、犬の散歩も同じ感覚になってしまうのではないかと。なんとドイツにはよりアクティブな意味を持つ「犬の散歩」を表す特定の言葉があるのだそうです。
また藤田りか子さんは、家の中にいても例えば冷蔵庫の前にいる犬に場所を退いてもらうときの指示の出し方ひとつ取っても、工夫次第で十分にコミュニケーションは取れる、簡単なコミュニケーションでも刺激に繋がると提案します。
そしてアルシャー京子さんは「しつけ」のベースとしても「飼い主と犬とのコミュニケーション」が重要であると指摘します。しつけを始めようと思っても飼い主のほうへ意識を向けてもらえないと進まないのです。飼い主が犬の欲求を満たすことや犬の興味を惹くことをしてあげれば犬が飼い主のほうへ意識を向けるようになる、一例として犬に食事をあげるときには飼い主の手からあげるという簡単なところから始めて、それを徐々に複雑にしていく(何かをクリアしたらあげるなど)といった方法が紹介されました(※それぞれの犬や飼い主によってうまくいく方法は異なります)。
生体販売について考える
現在はペットショップでの生体販売が当たり前であり、かわいい子犬が並んでいて「買える場」である日本に対して、動物先進国であるドイツやスウェーデンでは同様の光景はほぼ見られません。アニマル・ウェルフェアに則っていない最たる例であるような生体販売も多い日本は今後どういう姿を目指すべきかを考えていくために、スウェーデンやドイツの状況についてお二人の講師がお話されました。
まずスウェーデンではブリーディングに力を入れていて、飼いやすい犬を作ることが大きな柱になっていると藤田りか子さんは言います。飼いやすい犬を作るということは、家族に入って一緒に暮らしやすく捨てられることがないということに繋がるのです。更に近年、スウェーデンのケネルクラブでは気質テストを導入し、ブリーダーが気質テストを用いて家庭犬に合った気質の犬を作るようになりました。つまり犬を「育てる」以前に「作る」という段階に神経を集中させているのがスウェーデンの特徴なのです。
もうひとつ藤田りか子さんがスウェーデンでの動物保護が成熟している背景として挙げた点は、スウェーデンのブリーダーは動物保護法やケネルクラブの規制によって管理されていて、「5つの自由」を守っていないブリーダーにはケネルクラブ所属のケネルコンサルタントからの注意が与えられるということ。そのためブリーダーから犬を得ると、親犬や兄弟犬と過ごすなかで社会化もされた飼いやすい犬を得ることができるのです。逆に日本では申告すれば誰でもブリーディングが可能となり監視体制も機能していないため、信頼を置けるブリーダーを選ぶことも難しい状況です。
続いてアルシャー京子さんから、ドイツで犬を入手する一般的な2つの方法が紹介されました。ひとつめはスウェーデン同様にブリーダーから譲ってもらうという方法。ドイツでは犬種クラブによる管理が非常に厳しく、個人ではなく組織でブリーディングを行っています。そのため分娩場や繁殖環境の管理を組織的に監視していて粗悪なブリーダーは排除されるようになっているそうです。
ふたつめは動物保護収容施設である「ティアハイム」から譲ってもらうという方法。実はこちらのほうが規模は大きく各自治体にひとつはある施設であり、ドイツ全土に700から1000くらいはあるそうです。ドイツでは行政が動物収容施設を持たず、拾得動物は委託収容先となっているティアハイムに収容されて、一定期間を過ぎると譲渡に出されます。ティアハイムは170年ほどの歴史を持ち、そこに行って飼い主のいない動物をもらってくることが社会に浸透しています。
ここでアルシャー京子さんからドイツの特徴として「成犬を好む」という点が挙げられました。日本のように犬を飼うなら子犬、猫を飼うなら子猫という概念があまりなく、逆に大きくなった犬や猫であれば性格も大きさもわかっていて比較的手間もかからないため成犬を好む傾向があることもティアハイムが浸透している要因となっているそうです。ただしスウェーデンでは「パピーから自分で育てたい」という人も多いと藤田りか子さんは言います。滝川クリステルさんはパピーから飼うのであっても、自分で足を運んでブリーダーと対話することや自分が飼える環境かを議論してから飼うことが大切と指摘します。
なお、ドイツには一軒だけ子犬の生体販売を行うペットショップが存在します。ただし衝動買いできるシステムにはなっておらず、家族全員が来ることや最低3時間は話すことが必要で、家庭訪問が行われることもあり、欲しいと思っても渡されるのは早くて1週間後といった仕組みなのだそうです。
アルシャー京子さんによると、動物の権利だけを見ると禁止したほうが良いかもしれないが、人間の権利も守られる国なので、人間にも動物にもフェアな法律が作られているのがドイツの特色なのだそうです。
ここで滝川クリステルさんから、前日に小池都知事が「ドイツでは憲法にも動物の権利が導入された」とお話されていたことに言及されました。しかしそれは全て民意の表れであって、最初に憲法が変わったから国民の意識が変わったのではなく、国民の意識が高まることで結果的に憲法が変わったのであり、まずは皆さんの意識や成熟度、動物に対するモラルを高めていくことが大切とアルシャー京子さんは解説します。
「5つの自由」の具体例
ここで話は「5つの自由」の具体例に戻ります。まずは赤いクッションの上に寝ている犬の写真を指しながら、安心して休める場所を与えるということの重要性についてアルシャー京子さんからお話がありました。犬だって快適なところで寝たいという欲求はあるのですが、日本では犬の寝床は軽視されているような気がすると言います。藤田りか子さんは、犬をそのまま車に乗せているのをよく見かけますが、ふかふかとした布を入れてあげたほうが良いと指摘します。アルシャー京子さんによると、車に乗って興奮する犬はふかふかしたものを敷いてあげると落ち着くこともあるのだそうです。アルシャー京子さんはまた日本で小さな小型犬を膝の上に乗せて運転するのを見て驚いたそうです。安全を考えても犬が落ち着けるベッド(カドラー)などを入れたキャリーに入れてあげることが大切です。
続いて、リードを付けたまま犬と犬とを交流させることについての議論が交わされました。藤田りか子さんとアルシャー京子さんは、首輪を付けてリードが引っ張られた状態では犬の表情が変わってしまう問題があると言います。犬は自分の体のポジションを色々と変えながらコミュニケーションをとるので人が制限していると犬は自由にできないストレスによりキレやすくなってガウガウとなってしまうのだそうです。それに対して滝川クリステルさんから、ノーリードにできない場所が非常に多くそういう環境ができない日本では、犬が交流したいという欲求をどう満たせば良いのかという質問が投げかけられ、アルシャー京子さんは、せめてリードは弛ませること、引っ張らないということを提案します。また、近くに寄せて歩く場合と広めのところを歩く場合とでリードの長さを変えてあげるのも良いということです。まずはテンションがかかったままの状態は犬にとっては自由ではないということを念頭に置いて、なるべくリラックスした状態で交流させることが大切なのです。
会場との質疑応答
次に、会場を訪れたお客様と講師の方々との質疑応答が行われました。
穴を掘るのはストレスの表れ?
(会場のお客様)クッションとかを掘ることで布が痛んだり破れてしまって困っているという友人がいるのですが?
(藤田りか子さん)穴を掘るというのは自然な行動ですが、もしかしたらストレスの表れかもしれないので、普段の運動が足りないときなどに出てきてしまうこともあります。あまりにもひどいようならその犬との生活を見直す必要があるかもしれません。
(滝川クリステルさん)ストレスを感じているか感じていないかの違いは?
(アルシャー京子さん)でも寝る前の巣作りの行動としてゆっくり穴を掘る行動もあり、ゆっくり掘ってグルグル回ってそこに寝るというのは自然な行動です。いつもクッションを掘っている、穴を掘った後に走り回るといった行動はストレス発散の表れである可能性があります。
病気や怪我のときの「5つの自由」
(会場のお客様)うちのトイプードルが骨折中で獣医師から絶対安静にケージのなかで暴れないようにと言われているのですが、本人(犬)はあまり痛くないらしくピョンピョン、ホイホイしています。「5つの自由」の観点からは病気や怪我をしたときに、どの程度まで本人(犬)の自由を尊重してあげれば良いのでしょうか?
(アルシャー京子さん)もちろん安静はある程度の期間は大事で、ストレスが溜まってかわいそうと思われるかもしれませんが、犬のエネルギーを発散する方法は体を動かすことだけに限らないのです。体を思うように動かすことができないときには、犬の習性として適正にエネルギーを消耗させることになるかというと、例えば鼻を使った遊びをするという方法もあります。
(藤田りか子さん)例えば食事を与えるときにフードボウルに盛ってあげるのではなく、家具の下や色々なところに隠してあげて犬が自分のペースで歩いて探すという方法もありますし、簡単な芸をさせるといったコミュニケーションを取る、あっち向いたらご飯をあげるといった感じでメンタルの面でのトレーニングをしてあげるのでも良いのです。
(滝川クリステルさん)それは歳をかなり取った犬でも大丈夫ですか?若いうちにしか芸は覚えてくれないものと思っていました…。
(アルシャー京子さん)10歳を過ぎても大丈夫ですよ!
(滝川クリステルさん)根気よく芸を教えてあげることと、餌を色々なところに隠して自分で探すようにさせるといったことでストレス発散になるのですね。
(アルシャー京子さん)鼻を使うとエネルギーをものすごく消耗するというのと、もともと犬は鼻を使って生きる動物ですから、本来の欲求を満たしてあげることもできます。骨折や病気をしていなくても犬も頭を使いたい、何かを探索したいという欲求がありますので、普段のお散歩に遊びを取り入れてあげるといったことでお互いの関係ができあがっていきます。
(藤田りか子さん)活発な犬種を飼っている方は、むしろ肉体的な運動はある程度にとどめておいて、残りはメンタル面で疲れさせてあげるようにするとハーモニックな犬になっていきます。
最後の責任の取り方、ちゃんと飼っている人は絶対に捨てない
(会場のお客様)スウェーデンには日本の保健所のような施設はあるのでしょうか?
(藤田りか子さん)スウェーデンにも施設はあるのですが、政府は関与していない保護施設が数カ所、ほとんど無いに等しいです。ではどうするのか?狩猟犬でどうしても使えない場合には、狩猟に連れて行って鹿を追っている一番幸せなときに殺してあげたり、怪我や病気で動けなくなった犬を獣医さんに連れて行って安楽死させます。統計はわかりませんが、感覚的には老犬が自然死するということはほとんどないと思います。それが良いのか悪いのかというのはその人の価値観だと思います。
(滝川クリステルさん)猟犬ではなくペットも銃で?
(藤田りか子さん)動物保護法に抵触しない場合はですね。健康である動物を殺すのは動物保護法に抵触しますが、病気や怪我で苦しんでいる動物は出来るだけ和らげるようにとあります。
(滝川クリステルさん)注射ではなく銃で?
(アルシャー京子さん)銃のほうが苦しみは少ないんです。二酸化炭素で10分間かけて窒息死させるのと、銃で殺すのと、麻酔薬で殺すのと一番どれが苦痛が少ないかという問いかけなんです。生きているか死んでいるかという白か黒かという問題ではなく、生きている間、動物の意識がある間どれだけ苦痛がないかということなのです。
(滝川クリステルさん)すごく冷静にそういう議論がなされた上で到達したのが銃が一番苦痛を与えないという結論なのですね。日本社会では銃を使わないので無理なのですが、例えば殺処分にしても二酸化炭素を使って10分苦しませるやり方ではなく、持ち込んだ飼い主が自分の責任で自分で注射を打って安楽死させる、目の前で最後まで責任を持つ、そういったことが最低限必要だと思います。それすらもやらない、あとは全て行政の保健所の殺したくもない人達に任せるわけです。それはあまりにも人のモラルとしてかけ離れている、自分ではやらないからいいやと押し付けているところから問題が出てきてしまうわけで、せめて処分するなら自分で責任をもってやるということが大事、そういうことだと思います。
(アルシャー京子さん)日本でも終生飼養ということが言われ始めていますが、ちゃんと飼えないで飼い殺しの状態で終生飼養というのも違うと思うんです。なので生きている状態をできるだけ幸せにすること、それが第一の課題です。生活のなかで深い意味で人間とコミュニケーションが取れて、犬としての幸せが満たされていれば、それだけ人間も労力を使って一生懸命犬と暮らしてきましたから、絶対に捨てないんです。それが簡単に捨てられてしまうというのは逆にいうと家族と犬とが環境がわかれてしまっている、コミュニケーションがないんだなぁということの表れなんですよね。
最後に
最後に講師の皆さんから会場へのメッセージをもってセミナーを締めくくりました。
(滝川クリステルさん)あまりにも自分だけが良ければいいとかそういうかたちで共生する生き物に対して思いやりを持てないというのは、将来的に未来の子どもたちが生きて行く社会ではあるべき世界ではないと思います。今日も「命の花」の授業を青森から高校生が来てお話ししてくれているのですが、子どもたちがこういう活動をしていること自体、本来あってはいけない、大人が教えるべきなんです、子どもたちが気づくことじゃないんですよ、それを押し付けてしまっている結果だと思います。これからも子どもたちの教育も含め色々とやっていきたいと思っているんですけれど、そのなかでも「アニマル・ウェルフェア」はひとつの大事なテーマです。ですので、皆さんにもこの辺りをしっかり持ち帰っていただいて考えを深めていただければと思います。
(アルシャー京子さん)まず「アニマル・ウェルフェア」、犬や猫が生きている限りできるだけその自然なかたち、あるいは生まれ持った能力を生かしてちゃんと幸せな感情をもって、そして最後を迎えるということ、それは全て人間の手にかかっています。それを自覚しないと犬や猫、動物といった存在がぞんざいになってしまい、彼らはなんのために生まれてきたのかも分わからなくなってしまいます。なので、今一緒に暮らしている動物がいる方は、わからないことや疑問に思うことはどんどん調べて、ご自分のペットにとって良い方向へ変えていってもらえればと思います。そのために「5つの自由」を自分のなかで問いただしてください。ひとつひとつご自分で確認しながら、動物達にとってのウェルフェア、快適性と幸せを守ってあげてください。
(藤田りか子さん)「アニマル・ウェルフェア」というのは実は後から付いてくるものではないかと思います。まずその動物に対して興味を持つこと、観察すること、これができていたら自然に「5つの自由」も守られていくし、動物とのコミュニケーションも増えていくし、増えていけば(アルシャー)京子さんもおっしゃったように仲の良い関係もできて捨てることもなくなると思います。とにかく動物達に興味を持ってください。
(滝川クリステルさん)今日は女性も多いので、女性の方にメッセージを。消費の鍵を握っているのは女性だと思います。本当に女性の方達の賢い選択で色々な世の中を作っていけると思うんです。改めて女性の方々の意識というものを改革していくということをこれから考えていけたらなと。都知事も女性になりましたし、これから女性が台頭していくような気配も感じますし、本当に思いやりのある社会を作っていけるよう私達の賢い選択で変えていきましょう。