インターペット2017でノーズワークを見た!

文:藤田 りか子、写真:生熊 友博

3月30日から4日間の開催期間、のべ4万人近くの来場者を集めたビッグ・ペットイベント「Interpets(インターペット)〜人とペットの豊かな暮らしフェア〜(主催:一般社団法人ペットフード協会、メサゴ・メッセフランクフルト株式会社)」。ここで北欧はスウェーデンからバルブロ・リーデン先生を招いてのノーズワーク・セミナーが開催された。 これほど大きなイベントでノーズワークが紹介されたのは日本初!このセミナーの主催は、ドッグトレーナーのスクールを運営する株式会社プレイボゥ(協力:ノーズワーク トレーニング インスピレーション)。そしてこれはスウェーデンのドッグスポーツ界を日本に紹介するというある意味 国際文化(犬文化)交流の行事。というわけでスウェーデン大使館が後援、さらに北欧を代表する自動車メーカー「ボルボ・カー・ジャパン」が特別協賛となってくれた。何しろノーズワーク競技には車両に隠された匂いを探す課目もある、絶対に車無しには語れないスポーツだ!

ノーズワークへの興味、高い!インターペットのアリーナは立ち見客で埋め尽くされた

ノーズワークへの関心はインターペットの様々なイベントの中でも特に高かったようで、アリーナは立ち見のお客さんで埋め尽くされた!競技としてのノーズワークは車両サーチを含め全部で4つの科目(こちらをご参照あれ)から成り立つ。が、今回のセミナーではまずは初めての人のために、簡単に始められるボックスを使うコンテナーサーチでトライをしてもらった。

とは言っても、いきなり香りを探させるわけではない。まずはボックスにトリーツを隠し、それを探させる、というところから始める(ちなみに、今回使用したトリーツは、愛犬のためのプレミアムペットフード・ケアの専門店GREEN DOG(グリーンドッグ)を運営する株式会社カラーズからの提供)。ボックスのトリーツ探しに慣れたら、バルブロさんは即香りを含ませたフェルトのシールをトリーツと一緒に隠し、香り=トリーツ、という刷り込みを犬にする。ただし、今回のセミナーの初心者犬の部門では、トリーツ探しに集中をしてもらった。そして経験者部門では、トリーツと香り(ユーカリのアロマ水一滴)を一緒に置いて、刷り込みに挑戦。なんとコンテナーサーチのみならず、経験者犬たちはインテリア・サーチ(室内サーチ)にも挑戦。椅子の脚に隠された香りに犬がふと足を止め「おや!?」と気がつく。観客も犬の嗅覚の鋭さに改めて認識を深めたことだろう。

ノーズワークをやったことがあるという人、手を上げて!
ボックスを並べ、犬が見ている前でトリーツを箱におき、犬の興味を喚起させる。
必ずしも箱の中にトリーツを入れる必要はない。犬の中には箱に顔を突っ込むのを躊躇する子もいる。そういう犬に対しては、まずは箱の上において。とにかく箱を探索させる、ということを学んでもらうのだ。
このシェルティ、とてもシャイ。ステージに上がるのも躊躇したのだが…、
なんのなんの、一旦匂いの世界に誘われると、やはり犬のこと、臭うことに神経を集中させる。だから初めての環境ということに神経をあまり尖らせなくなる。こうしてシャイな犬でもノーズワークを介して、環境トレーニングを行うことができる。これを続けてゆけば、そのうち自信をつけることができる!そういう意味でも犬にとっては素晴らしいスポーツだ。
レトリーバーやピットブルなど もともと環境への順応性が高く、好奇心の強い犬は、初めてでも果敢にボックスに顔を突っ込んでゆく!こういう犬の場合、トリーツは箱の中に入れて、かえって少し探すのを難しくした方が犬のチャレンジ心を煽る!

ノーズワークの始め方というのは、いろいろある。本場アメリカでも、K9ノーズワーク協会が勧める方法、あるいは麻薬や爆薬探知犬などディテクション・ドッグ(Detection Dog =探知犬)のトレーニングを基にしたやり方、あるいはそのミックスなど実に様々。これと言った決まった方法はない。この点では、どのドッグスポーツとも共通している。

「犬とハンドラーの個性に合わせて!」

とバルブロさん。やり方の一つとして、バルブロさんは、アメリカのノーズワーク創始者の一人ロン・ガーンさんから学んだノーズワーク導入方法を披露。ロンさんは過去4年間毎年スウェーデンに出向き、セミナーを開催して多くのノウハウを伝授している。

まずは箱を並べそこにトリーツを入れ、犬の「箱を探索する」という好奇心を培う。この好奇心が後々、「探したい!」というサーチ欲に育って行く。セミナーの最初は全くの初心者にトライをしてもらったので、実際の競技会のターゲット臭となるアロマは使わない。バルブロさんは、ただし犬の性格に合わせ、トリーツの隠し方などをいろいろ変えながら、この遊びの面白さを犬たちに体験させた。すぐにトリーツの匂いを探し出してしまう犬には、箱を重ねて少し難しくしたり。鼻を突っ込んだものの、箱が動くことに怖がってしまう犬に対しては、箱の中ではなく上に置いて、トリーツ探しに馴らせたり。楽しんだのはもちろん犬だけではない、犬をハンドリングする飼い主さんたちも愛犬の嗅覚の使いようにすっかり魅了された!

熱心にノートを取る人も!「ノーズワークを学びたい!」情熱は会場にムンムン
ノーズワークに経験のある犬達にはインテリア・サーチを体験してもらった。香りの入った容器を椅子の脚に隠しておく。まだ完全に刷り込みができていないので、容器の上にトリーツを置いた。
マルチーズ・ミックスのレモちゃんは、トリーツなしでも「におい」を発見した!好奇心の強い犬は、このように割合簡単に「刷り込み」を経て「におい」だけを探すトレーニングに移行することができる。

私は今回このイベントのコーディネートと通訳を務めた。こんなに日本でノーズワークの関心が高くなっているとは正直驚いた次第だ。そしてこのスポーツぐらい、日本の犬事情にぴったりなものはないと思う。何しろ、場所を選ばない。アジリティのように施設もいらない。アロマと犬の鼻さえあれば、どこでもできる。なかなか長い散歩ができない、あるいは散歩がマンネリになりすぎて犬に申し訳ない、と考えている飼い主の皆さんも、ノーズワークを犬に導入してあげることで、犬のウェルフェアをぐんとアップしてあげれること請け合いだ!

 

ABOUTこの記事をかいた人

藤田りか子

ドッグ・ジャーナリスト。スウェーデン・ヴェルムランド県の森の奥、一軒家にて、カーリーコーテッド・レトリーバーのラッコと住む。人生のほぼ半分スウェーデン暮らし。アメリカ・オレゴン州立大学野生動物学科を経て、スウェーデン農業大学野生動物管理学科にて修士号を得る。 著者に「最新世界の犬種図鑑(誠文堂新光社刊)」など多数。新しい犬雑誌「Terra Canina(テラカニーナ)」編集及び執筆者