だからノーズワークにハマりました!

文と写真:藤田りか子

ノーズワークというスポーツを知った時、

「これぞ、うちのラッコにぴったりだ!」

と思った。彼はカーリーコーテッド・レトリーバーのオス犬だ。ちょうど、思春期のピークを迎えており、他のドッグスポーツをトレーニングしていたのだが、どうも集中せず私が思う通りのパフォーマンスをこなしてくれなかった。こういう時は、どうせ失敗ばかりするのだから、トレーニングはやめてしばらくタイムアウトの期間をとったほうがいいと悟った。が、そうは言っても毎日タラタラ散歩させるだけでは、ラッコの犬としての幸せ生活が叶えられない。何か犬として意義のあることを、と思っていた矢先に私が属するワーキングドッグクラブにて初心者向けの「ノーズワーク」のコースが始まることを知った。そして、そこから私とラッコの「ノーズワークにハマる」生活が始まったのだ。今から約1年前のこと。

おかげで、思春期の「気まぐれで自分勝手」なラッコとは素晴らしい時を過ごすことができた。一緒にトレーニングをしている仲間でもありインストラクターでもあるAさんは

「あなたとラッコ、この一年の間で素晴らしいペアになったわね」

と褒めてくれた。そう、私とラッコはノーズワークをやりながらともに成長した。作業をしている間、我々は完全な「一つのチーム」。私はラッコの鼻を信じ、彼についてゆく。そしてラッコはアロマ臭を見つけ、その狩猟の報酬を私からもらう。この楽しいゲームは決してラッコ独りだけではなく、私と一緒にやることで、実現する − ここがノーズワークの「ミソ」でもある。犬が得意としている技能を使って人と一緒にサーチのゲームをするのだから、 飼い主との信頼関係は一層培われ易くなる。

他の競技をしている時は何かと気を散らしてしまうラッコだが、ノーズワークをしている間は完全に集中、少々の邪魔が入ろうと 気にもしない。一旦ゲームのコンセプトを理解すると、犬たちはそこまでノーズワークに夢中になるのだ!それもこれもこのスポーツは犬の最も大事で大切な器官、鼻を使わせる遊びだからということを覚えておいて欲しい。

最初の一歩!

前回の記事で説明をした通り、ノーズワークという競技を行うにはまず犬に「ターゲット臭を探す」ということから覚えてもらわなくてはならない。麻薬探知犬なら、ターゲット臭はコカインやヘロインとなるところだが、ノーズワーカーは競技会で使うアロマ臭を覚える(最初は、アメリカならバーチ、北欧ならユーカリ)。覚えさせるトレーニング方法はたくさんある。だが、どの訓練においても一つ共通しているのは、アロマという犬には興味のないニオイを、犬の好きなもの(トリーツやおもちゃ)と連想させて学習させるという点 。つまりバーチの匂いを嗅いだら、犬は自然と「トリーツがもらえる!」とか「おもちゃで遊べる!」と連想をする。そしてその連想があるから、犬はターゲット臭を探し出そうとする。

実猟に基づいたドッグスポーツのほとんどが、実はノーズワークそのものだったりする。レトリーバーのためのフィールド競技は落ちた鳥を回収させる、というものだが、その際に犬は鼻を使って獲物を探す。

この最初の一歩は、犬によってそしてハンドラーである飼い主の 犬経験によってもかかる時間はまちまち。もともと好奇心が旺盛で何かを探すという行為に日頃から慣れている犬、そして飼い主がトレーニングにこなれていれば、1ヶ月もあればターゲット臭の連想付けはクリアできる。しかし、たとえば保護犬出身で環境トレーニングが子犬の頃できておらず何かとビビる犬、室内に閉じ込められっぱなしで若犬の時代に好奇心を培えられなかった犬であれば、まず様々な環境に慣れさせる、ということから始まるので、それなりの時間はかかる(半年から一年ぐらいのタイムスパンを考えるといいだろう)。だから、その場合はむしろノーズワークそのものよりも、ノーズワークを通して 環境トレーニングや自信をつけさせるアクティビティを与えたい、というぐらいの気長な気持ちで取り組まれられたい。

競技会のため?それとも日常のアクティビティのため?

そもそも競技会に出たいのか、そうではなく愛犬の日常のアクティビティとかメンタル・トレーニングのためにノーズワークを行うのか、ということもこのスポーツを取り組む上で考えるといいだろう。競技会に出るには、様々なルールもある。確実性も問われる。それを見据えた上で行うのか否かでトレーニングの方法は異なってくる。例えば、競技会のルールでは、探している途中でおしっこをエリアに引っ掛けると、その場で退場が言い渡される。だから何が何でもおしっこをさせないようなトレーニングも必要となる。さらに、 上のレベルにゆくとトリーツなどの誘惑臭が仕掛けられており、果たしてそれに引っかからないで犬がターゲット臭を探せるか、ということも試される。よって訓練が進めば誘惑臭を伴ったトレーニングも必要だ。一方で競技会にでるつもりがないのなら、わざわざ競技会で決められているターゲット臭を使う必要はなく、例えば紅茶の葉などでも代用できる。

競技会に出る、という目標だけで、いろいろな場所でノーズワークにチャレンジするようになる。これはいわば犬のメンタルをよりよく活性化することにもつながる!

さて、出るつもりはなくとも、とりあえず競技会にいつかは出れたらなぁというぼんやりとした目標(はっきりとした、ではなく)を持つことを私は個人的にオススメする。 目標を持つことで、よりシステマティックにトレーニングができるし、犬のことを読もうとする気持ち(いま、ターゲット臭を見つけているのかどうか、犬を読むことが必要だ)も強くなる。犬を読めるようになると、ノーズワーク以外のところでも愛犬との関わり方は向上する。

ただし競技会に出ようと出まいと、所詮犬には関係のないことだ。大事なのは犬も人も楽しんでいること!この基本的なコンセプトを絶対に忘れぬように。これがノーズワークの真髄でもある。

次回はターゲット臭の覚えさせ方を紹介します。お楽しみに!

インターペットでノーズワークを知る!

講師を務めてくれるのは、ノーズワーク急成長中のスウェーデンより、バルブロ・リーデンさん。

前回も少しお伝えした通り、私(とラッコ)もハマっているノーズワークがInterpets2017(インターペット2017)に初登場する。

年齢、犬種関係なし。どんな犬でも参加できる、 最高の嗅覚エンターテイメント。ノーズワークを知りたい人、ちょっとトライしてみたい人、そして愛犬ともっと良い関係を作りたい人、是非インターペットで開催される体験会へご参加を!


開催概要

子犬からシニア犬まで!今話題ノーズワーク

  • 内容:ノーズワークに関するセミナーの後、初歩的なコンテナサーチの体験会(予定)
  • 日時:2017年3月31日(金) 13:00-15:30(受付開始:12:50〜)
  • 会場:東京ビッグサイト東ホール インターペット内
  • 料金:無料
  • 席数:先着30名、以降は立ち見となります。
  • 補足:セミナー参加者のうち希望者のなかから抽選で体験会にご参加いただきます。セミナー中や他の方の体験中には愛犬はキャリー等での待機をお願いいたします。

※インターペットのWEBサイトはコチラから。

■講師:バルブロ・リーデン

  • フンドウッデンズ・トレーニングセンター所長
  • スウェーデン・ノーズワーク・クラブ公認インストラクター
  • スウェーデン・ケネルクラブ公認気質テスト審査員
  • オビディエンス、フィールドトライアル(レトリーバー)インストラクター

 

■コーディネーター:藤田りか子
■主催:株式会社プレイボゥ
■協力:ノーズワーク トレーニング インスピレーション/INU MAGAZINE(イヌマガジン)
■後援:スウェーデン大使館
■特別協賛:ボルボ・カー・ジャパン株式会社
■協賛:GREEN DOG(株式会社カラーズ)

 

 

ABOUTこの記事をかいた人

藤田りか子

ドッグ・ジャーナリスト。スウェーデン・ヴェルムランド県の森の奥、一軒家にて、カーリーコーテッド・レトリーバーのラッコと住む。人生のほぼ半分スウェーデン暮らし。アメリカ・オレゴン州立大学野生動物学科を経て、スウェーデン農業大学野生動物管理学科にて修士号を得る。 著者に「最新世界の犬種図鑑(誠文堂新光社刊)」など多数。新しい犬雑誌「Terra Canina(テラカニーナ)」編集及び執筆者