“もし自分が犬だったら、着たいと思える犬服。”
犬とファッションを愛してやまない愛犬家にとって、心からそう思わせるドッグウェアに出会えることはなかなかありません。
素材感やデザイン、パターンや縫製、そしてアイテムに込められた思い、こだわりはじめるとどうしても”アラ”が見えてきてしまいます。
そんな、ファッションへのこだわりを持つ愛犬家の皆さんにご紹介したいブランドが、東京を代表するトレンドやカルチャーの発信地、「原宿」にあります。
ブランド名は、 “Kelty by Utility(ケルティ バイ ユーティリティ)” 。
取り揃えられたアイテムはもちろん、オーナーの人柄に惹かれたミュージシャンやアーティストも足繁く通うアパレルショップ “Utility” のドッグウェアラインとして、2014年からスタートしたばかりの新しいブランドです。
1982年、今や世界中のブランドに影響を与える存在となったヨウジヤマモトとコム・デ・ギャルソンがパリコレクションにデビューしたその年に、北海道函館市で生まれた “Utility” 代表の浜中健太郎さん。
「裏原系」全盛期である90年代後半にハイテクスニーカーを履いて雑誌『Smart』を読みふけるという中高時代を過ごした後、迷うことなく上京し、文化服装学院へ進学。
アパレルショップ勤務を経て、2010年9月、彼にとっての ”ファッションの聖地” ともいえる「原宿」に、学生時代からの友人たちと “Utility” をオープンさせました。
ショップのコンセプトは、店名の由来でもある「何でも屋」。オリジナルブランドを中心にストリートやモードというカテゴリーに捉われず、ウェアからアクセサリー、雑貨やオリジナル什器まで様々なアイテムを展開しています。
ファッションの持つ力に魅了され続けてきたという浜中さんに、ドッグウェアブランドを展開するきっかけとなった愛犬との出会いやブランドのこだわり、目指すものについてお聞きしました。
転機となった愛犬との出会い
現在、プライベートでは奥様と2頭の愛犬達と生活されているという浜中さんにとって、転機となった愛犬との出会いとは?
フレンチブルドッグが欲しかったんです。もともと。
僕、住んでたのが当時1Kだったんですよ。ペットはもちろん不可。(編集部注:賃貸物件で犬を飼われる際は、ペット可の物件で飼いましょう。)
だけど、その時に行ったペットショップで出会ってしまったのが、チワワのKelt(ケルト)なんです。
ほんとにその場で、買ってしまいましたね。
やっぱり犬ってなんか引き寄せられる何かがあるのか、その場で勢いで買ってしまったんですよ。
まあ、それが転機だったりするのかもしれないですね。
ドッグウェアブランド”Kelty by Utility”立ち上げのきっかけとは?
愛犬Keltと出会った浜中さんはやがて、その名を冠したブランド”Kelty by Utility”を立ち上げることになります。
ブランドの立ち上げのきっかけになったのは、浜中さんご夫婦のある ”気づき” と、浜中さん以上の行動力を持つという(?)奥様からの言葉でした。
僕の嫁が、もともとアパレルだったんですけど、犬を飼ったのをきっかけに、ペットの方にどっぷり浸かった、というのもあってペット業界にいったんです。
それが、(奥様が)ペットショップで働き出したっていうのが、きっかけの一つでした。
元々ふたりともアパレルやってたんで、好きなテイストはしっかりあったりとか。
やっぱり、(ドッグウェアとして)自分たちの求めてるものがないっていうところでも意見の一致はあったんですよ。
そんなとき、「あなたのバックグラウンドも多少ついたし、そこで犬服っていうのを主導でやってもいいんじゃないか」という言葉が、ブランド立ち上げのきっかけになりましたね。
“Kelty by Utility”のこだわりとは?
浜中さんは、そんな言葉を背に “Kelty by Utility” を立ち上げられました。そのブランドに込められたファッションを愛する男ならではのこだわりをお聞きします。
まずやっぱりこう、世の中に多い犬服ってどうしてもデザイン性が強い、例えば”フリフリしてる洋服”だったりとか、女の子向けなのかわかんないですけど。
そうじゃなくって、普通に、シンプルに、素材がものすごいいいTシャツとかってなんでないの?っていうのはずっと思ってて。
僕らKeltyで使ってる服の素材って、下手したら人間でもあんま使わないくらい高かったりするんですよ。
もし、人間のTシャツにした時には、すごい高級品になっちゃうような素材を、犬用ってサイズがちっちゃいじゃないですか。
だから、一枚に換算したらそんな高くなくなるかな、じゃあ使えるかな?とか。
そういうところもあって、やっぱり”素材がまず第一“。
僕らはお店の裏を半分工房にしてて、Tシャツの上にシルクスクリーンを乗せて、インクを垂らしてビュッとやると、プリントTシャツができるんです。
それをお店で手仕事で作っていたりするので、買ってくれた愛犬の名前を無料で入れてあげられるとか、イニシャルを入れるサービスなどもしています。
“Kelty by Utility”の目指すドッグウェアブランドの形とは?
ご自身の愛するファッションのカタチをドッグウェアへと落とし込んでいく浜中さん。
彼が思う、これからの “Kelty by Utility” の目標を少しだけ聞くことが出来ました。
ペット産業っていうのは良くも悪くも僕ら全然わかんないんで、まあ無視してもいいかなっていう、もう振り切った気持ちで。
(浜中さんのような)ファッションで生きてきた人間が、変な話、自分自身が犬だったらどんな服着たいか、っていうのは考えますか?(笑)
そうっすね(笑)
犬の気持ちわかんないですけど、犬でもやっぱり、どうせ服着るんだったらおしゃれをしたいんじゃないかって。
できれば、犬を飼ってる世帯に、一家に一着くらい浸透してくれたらうれしいですよね。世界中でね。Keltyが。
地道にその辺を目指しながら、散歩に行くときに、飼い主もワンちゃんも楽しんで散歩ができる服作りができたらな、っていうところが目標ですね。
撮影を終えて、浜中さんと初めてお会いした頃に伺ったお話を思い出しました。それは、函館から遠く原宿を憧れの目で見ていた頃と変わらないファッションに対する純粋な思い、そして感謝。おそらくそれが、彼を突き動かす原動力になっているのだろうと強く感じたことを覚えています。
僕らが若かった頃って、ファッションが一番元気だった頃だと思うんです。
アルバイトで貯めたお金でアンダーカバーやグッドイナフを着たり、エディスリマンの影響でみんながスキニージーンズをはいてたりした頃。
でも、今は当時のような盛り上がりがなくなってしまっている。
ファッションを通じて知り合った人達は今も大切な仲間だし、ファッションのおかげで今の自分がいます。
だから、ファッションが当時のような元気を取り戻せるように、自分にできることを精一杯やっていきたい。
同じように、愛犬達との出会いに対する純粋な思いや感謝、そして、ファッションの世界に生きているという誇りを持って生み出しているドッグウェア、”Kelty by Utility”。
犬を飼う時に、 “目があったから” とか “勢いで” って、ホントはダメなのかもしれません。
でも、どんなカタチで出会ったとしても、出会ってからの日々をどう過ごすかのほうが大事。
あいつらは大切な家族の一員だからこそ、僕は、飼い主さんと愛犬とが一緒にオシャレして出かけたくなるような洋服を作り続けていきたい。
シンプルに、上質に仕上げた一着一着には、そんな思いがつまっているのです。