今から14年前の今日5月22日に、「身体障害者補助犬法」という法律が成立しました。
日本で初めて盲導犬が導入されたのが1939年、ドイツからやってきた4頭の盲導犬がそれであったと言われています。
また日本で育成された盲導犬1号となったチャンピイがその役を担い始めたのが1957年。
それから数十年の時を経て、2002年にようやく身体障害者補助犬が法律の中で公に認められることとなりました。
補助犬法成立の記念日の今日、私たちが知っておくべき補助犬法について皆さんと共におさらいをしたいと思います。
1.身体障害者補助犬法って?私たちが法律の中で求められていること
出典:http://www.jsdrc.jp/
補助犬とは、盲導犬、介助犬、聴導犬の総称であり、この3種類が補助犬法の対象となり、5月1日現在で盲導犬が984匹、介助犬が74匹、聴導犬が65匹います。
補助犬法が定めていることは主に「①訓練や認定について」「②公共施設・住宅での同伴に関するルール」「③補助犬へのケアについて」「④企業・自治体の対応」です。
特に私たちと密接なのが②のルールです。
多くの方はご存知の通り、補助犬を連れた身体障害者の方が公共施設(自治体のみならず民営施設も)を利用する場合、補助犬がついてくることを拒むことはできません。
飲食店の場合、衛生や他の顧客に遠慮をして断ってしまうということがニュースに取り沙汰されることがありますが、「当該施設に著しい損害が発生」しない限り、この対応は違法です。
でも本当に介助犬って衛生的なのか心配という方が周りにいたら「③補助犬へのケア」について説明してあげましょう。補助犬法においても以下のように定められています。
第二十二条 身体障害者補助犬を使用する身体障害者は、その身体障害者補助犬について、体を清潔に保つとともに、予防接種及び検診を受けさせることにより、公衆衛生上の危害を生じさせないよう努めなければならない。
また、日本補助犬情報センターのホームページにも以下のように説明があります。
身体障害者補助犬法により、補助犬使用者には、社会参加に必要な衛生管理と行動管理が義務付けられており、定期的なシャンプーや毎日のブラッシングで、補助犬は清潔に保たれています。(抜け毛予防のための洋服やケープをつけている場合もあります。)
このように補助犬が社会の中に受け入れてもらえるよう、使用者も十分に気を遣っています。
何よりも①「訓練や認定について」でも定められている通り、十分な訓練を受けて、必要な試験等に合格したとても優秀な犬たちです。
通常の入店で施設に多大な迷惑がかかることはほとんどないでしょう。
さらに平成19年の一部改正で加えられた④「企業自治体の対応」についても、民間企業に対しても身体障害を持った労働者が補助犬を使用することを拒んではならないとしており、どんな場面でも補助犬は受け入れられるべきである旨が明記されています。
2.もしも街で補助犬に出会ったら?補助犬によって異なる私たちが行うべき対応
出典:http://thedogist.com/post/134337864331/tango-labrador-retriever-1-yo-cci-northeast
補助犬を見かける機会は年々増していますが、もしも補助犬をみかけたら私たちにできることは何かあるのでしょうか。
基本的には補助犬はハーネスや表示をつけている時は「仕事中」になります。そしてユーザーの方の体の一部です。
むやみに声をかけたり、触るなど犬の注意が散漫になるような行為は控えましょう。当然、水や食事をあげてもいけません。
ただし、使用者の方が困っている場合には「何かお手伝いしましょうか?」と声をかけてあげてください。
もし協力を求められた場合には以下の点に注意してお手伝いをして上げてください。(厚労省ホームページより)
ー盲導犬ユーザーの場合
視覚障害者を誘導する際に最も気を付けなければならないことは、「安全に安心して歩く」ということです。
- 視覚障害者の1歩前に立ち、あなたの腕もしくは肩や肘に手を掛けてもらいます。
- 視覚障害者の歩くスピードにあわせて歩きます。
- 視覚障害者が不安にならないよう、右に曲がります、階段を上りますなど、次の動きや周囲の様子をわかりやすく知らせることが必要です。
ー聴導犬ユーザーの場合
聴覚障害者との接し方で留意すべきことは、会話が中心になると思われます。
会話の手段には、手話、筆談、口話などがあります。聴覚障害者だからと言って、必ずしも手話でなければならないということはありません。
メモ用紙等の準備があれば筆談などが可能ですし、障害の程度によっては大きな声で伝えれば理解していただける場合もあります。口話は、口の動きを読み取って理解する方法ですので、マスクなどを外して対応することが必要です。
簡単な内容であれば、身振りなどでも伝わる場合もありますが、どのような方法をとるかは、本人に選択していただくことになります。
ー介助犬ユーザーの場合
肢体不自由者を誘導する際には、極力段差のない場所を選択する必要があります。多少の段差があった場合などで、介助犬では乗り越えることができない場合には、支援方法を確認の上で、介助をします。
また、障害者が利用している車椅子は、大きさなどが様々ですが、車椅子で移動する際には、ある程度のスペースが必要となりますので、日頃より院内での移動経路などについてイメージしておくことが必要です。
3.14年たってもまだ多く残っている課題。私たちが広めていくべきこと
出典:https://en.wikipedia.org/wiki/Thought#/media/File:Thinking.jpg
まだまだ補助犬法に関する理解が不足している方も多く、補助犬を使用している障害者の方が不快に感じたり、困ってしまうことがあります。
特に多いのが前述したような「入店拒否」。日本補助犬情報センターが行った補助犬ユーザーへのアンケートでも6割以上が入店拒否の経験があると答えたそうです。
その中でも病院や薬局で断られるケースも珍しくなく、厚生労働省では医療機関向けに理解を求める資料を作っているほど深刻な問題となっています。
→厚生労働省「身体障害者補助犬ユーザーの受け入れを円滑にするために(PDF)」
一方で、補助犬自体が不足しているという問題もあります。
例えば盲導犬を希望する人の数は3,000人から4,000人とも言われています。
補助犬の育成には1頭あたり300万円かかるとも言われており、潜在的な希望者に対して補助金だけで全てをまかなうことは困難です。
例えば日本盲導犬協会のクレジットカードなどのポイントによる寄付や使用しなくなった携帯電話による寄付など、支援の方法も広がっていますので、ご検討されてみてはいかがでしょうか。
また、補助犬に関する情報の普及や啓蒙活動を行う「特定NPO日本補助犬情報センター」のホームページには詳しい支援方法等が掲載されていますが、資金援助に限らず、まずは皆さんが補助犬に関する正しい情報をご理解いただくことが、補助犬が社会に受け入れられるための基礎となります。
是非ご覧になられてみてください。
監修:日本補助犬情報センター