日本のペットマーケットで育った洗練されたドッグアパレルやグッズブランド、美容ブランドやグルーマー達が集まり、「愛犬と愛犬家とのより豊かな暮らし」の実現を目指す “Dog Fashion & Beauty Week” 。
そんな “Dog Fashion & Beauty Week” のキーパーソン達のストーリーを紡ぐインタビュー企画「KEYPERSON’S STORY」。
今回は、トリミングサロン「TALL TREE(トール トゥリー)」オーナーグルーマーの高木 美樹さんにお話を伺いました。
大学時代に出会った愛犬が人生を変え、犬に関わる仕事に導かれるようにして関わるようになった高木さんのストーリーをぜひ御覧ください。
偶然出会った愛犬が、人生の転機となった
画像提供:TALL TREE
(編集部)グルーマーになられたキッカケは?
大学4年生の時の夏休みですね。ホームセンターに行って、みんなでバーベキューしようと思って炭を買いに行ったんですけど、その時にワンちゃんコーナーっていうか、ペットショップがあって、そこを私がサボって見に行ったんですよ。
それで、店員さんが「抱っこしますか?」ってお決まりの文句ですよね。それに引っかかって、抱っこして買いました、犬をそのまま。
(編集部)え!?
付け加えると、実はその1ヶ月後にもう一匹買ったんですよ。
(編集部)え!?
エサとかおやつとか、買いに行くじゃないですか。飼い方もわからないので、ちょっと聞きに行ったりとかした時に、「この子抱っこしますか?」「します」で、買ったんですよ2匹目。すぐ多頭飼いで。
でもこんなに世の中にかわいい生き物がいるんだっていうのを初めて知ったんですよ。実家には外飼いの犬がいたんですけど、室内でこんなに飼い主に従順でっていう。
元々動物好きだったんですけど、もう好きすぎて。その時就職が決まってたんですけど、内定もらって、研修してたりしたんですけど、すぐ辞めましたね。
(編集部)え!?
でも大学からはすごいブーイングで、「何をするんだ?」って言われた時に、何も言えないですよね。「犬が好きで、犬関係の仕事に就きます!」っていうのは言えなくて。
「まあちょっと事情が…」っていうところで(笑)。でもその時はグルーマーさんっていう仕事も知らなくて、とにかく犬のために何かしたい、仕事がしたいっていうので、就職活動したんですけど、「犬が好きです!」っていう答えしかなんにも出てこないんですよね。
犬飼って何ヶ月かですし、犬ってどういうものも何も説明出来ないのに、就職活動しても雇ってもらえなくて。じゃあどうしたらいいかなって言った時に調べてたら、そういう学校がある、グルーマーさんっていう仕事があるっていうので、初めてそういう仕事を知ったんですけど、でもその時もなりたいとは思ってなかったんですよね。学校に行って友達ができるし、先生と仲良くなったら就職先とか紹介してくれるだろうなぁ〜ぐらいで学校に行き始めましたね。
なのでその時もグルーマーさんを目指そうというよりは、ただ犬に触りたいとか、犬の知識を身に付けたいっていうところだったので、あまり興味は、カット自体はなかったですね。気づいたらグルーマーに今なってます。
自身に大きな影響を与えた愛犬たち、そして渡米の決断
画像提供:TALL TREE
(編集部)今一緒に暮らしているのは?
今はミニチュアダックスフンド2頭と、アメリカンコッカースパニエル1頭。
あ!でもその子を飼って、結構グルーマー、カットすることが楽しいなあていうのを思いましたね。それまではシャンプーとか、食事の管理とかっていう方にすごい興味があったんですけど、そのコッカーを飼って毛を綺麗にしたりとか、ちょっと賞に出したり勉強でしてたので、そこでカットとか、毛の管理っていうところで興味を持ち始めたっていうのはありますね。
(編集部)それでグルーマーというお仕事に目覚められたと?
入り口としてはこういうカット楽しいかもぐらいで、ちょっと頑張ろうかなって思ったまま、お店を始めて2年ぐらい経った時に、嫌になったんですよ、お店が。やめてしまいたくなって。
(編集部)え…(苦笑)。
カットも上手じゃないし、毛玉だらけとかのワンちゃんとかが来て、必死にやるわけですよ。
(編集部)なるほど…。
でも必死にやっても、飼い主さんにはいろいろ言われるし、とにかく仕事が楽しくなくて。従業員に任せて、アメリカに留学しようと思って、アメリカに行きました。
(編集部)え!?
そこで、犬に負担をかけないグルーミングの仕方とか、速くやるやり方、グルーマーさんも負担がないやり方を知って、とにかく身に付けて、日本に戻ってきてお店でやり始めたんですよ。
グルーマー人生を変えた、アメリカでの経験
画像提供:TALL TREE
(編集部)帰国して、どういった点が変わりましたか?
アメリカに行ったことが、本当に良かったですね。
もう頭の中が全てアメリカナイズされてるので、もう帰ってきてトリミング室の道具は全部捨てましたね。もう全部ガラッと変えてやり方は全部変えて。
(編集部)へぇぇ〜。
でもちょっとずつ変えるっていうのも無理だったし、やるんだったら徹底的に。
それについてこれないスタッフはすぐ辞めちゃいましたよね、やっぱり。
でも、お客さんもそれで変わりました。犬のことを考えてくれるようになったし、とにかく全部が良くなりましたね。
道具はやっぱり、もうアメリカ製品というか、海外製品ですけど、考え方がやっぱり全然変わりましたね。犬中心に考えられるようになったし、それをお客様に伝えられるようにもなったし。
何しろ自分がグルーマーであるっていうことに自信を持たなあかんってことは、すごいアメリカから教わって、自信を持たないと犬の幸せに繋がらないっていうことは、ものすごい分かりました。
今までは、綺麗にしてカットして帰す、お客様に言われるがままにするしかないっていう感じだったんですけど、何が一番大事かって、犬にとって何が大事かっていうのをお客様と考えられてなかったんですよ。話の中に犬がいなかったなって、前は。注文聞いて、それを仕上げるだけ。
でも今は、注文もちろん聞きますけど、犬にとってそのグルーミングはどうなのかっていうのを、犬と一緒に考えられるようになったっていうのは、大きく変わったとこだなと思いますね。
お店として、揺るぎない方針が決まったというか、犬に負担をかけないという。今までは結構ぶれてるというか、やらなきゃいけないなっていう感じだったんですけど、そこは変わりましたね。
これから実現したい夢とは?
画像提供:TALL TREE
(編集部)高木さんの夢は?
夢は、私が一番最初にアメリカで受けた衝撃ですよね。ワンちゃんに負担がないグルーミングを、日本でも行えるようになりたいです。
(そんなグルーミングを)皆がしてもらえることと、グルーマーが誇りを持って、自分がプロとして発言できるような地位にしたいなっていうのは、今の夢としてあります。
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きっかけは愛犬との偶然の出会い。ただ、その偶然が導いたグルーマーという仕事は、やがて高木さんの人生を大きく変えることになりました。
グルーマーとしての悩みや課題を克服しながら、単身渡米しアメリカのグルーミング技術を日本国内で着実にお客さまの喜ぶサービスへと昇華する高木さんの姿は、いまや他のトリマーたちの憧れにもなっています。
第6回Interpets(インターペット)では、普段は主に関西で活躍されている高木さんもカリスマトリマーとしてその腕を披露してくれることとなっています。ぜひお立ち寄りください。