第1話はこちらから。
少し時間を巻き戻す。2016年1月2日。
私は、不安だった。
翌週に迫る『INU MAGAZINE』リリースを無事に迎えられるのか?
という不安。
いや、違う。
不安の原因は、AZIだった。
彼は果たして、覚えているのか?
「酒の席から何かを始めるのってなんか許せないから、年明けすぐに改めて集まろう。」
あの言葉は、ずっと心の中に引っかかっていた。
いや、酒の席だ。まさか記憶から飛んでしまってはいないか?
『INU MAGAZINE』のリリース準備を進めつつ、2日待った。
夕刻、待ちきれず、この縁を取り持ってくれた浜中氏に連絡した。
すると、偶然、ちょうどAZIと一緒にいるという。
浜中氏から、打ち合わせの店が送られてくる。もちろん、”酒の席ではない場所”だ。待ち合わせは2日後。
そして、2016年1月6日、東京代官山某所。
席に着くなり、AZIから発せられた、グラフィティアーティストAZIと「犬」との関係。
「オレさ、犬、飼ってないんだよね。」
実は、私にとっての最大の不安。それは、初対面では多くの言葉を交わさず、犬と生活している様子も窺えなかったAZIの「犬」に対する思いがどこまで本気なのか、ということだった。
しかし、その不安はすぐに掻き消されることになる。
「犬、飼ってないんだ。今は。」
その日聞いた “今は” に続く話を詳しくは書かない。だが、彼が本当に「犬」を愛していることを知った。
彼の言葉は、本心からの言葉だということを確信した。
年末に聞いたあの言葉だ。
「オレさ、飼ってる犬に暴力振るうヤツとか、犬捨てちゃうヤツとか、ホント許せないんだよね。」
そう。不安に感じる必要などなかったのだ。そうでなければ、あの言葉で自分達の心が動かされることもなかっただろうから。
そして、AZIは続けた。
「みんなさ、実際のところ、犬を助けるために寄付とかってしたことある?なくない?オレは以前、仕事でもらったドッグフードを、うちに置いてても仕方ないから施設に送ったことはあるんだけど、それくらいなんだよね。」
AZIと初めて会った日に思ったことは、まさに、そこだ。
犬を取り巻く課題を知っていても動き出せずにいた自分のような人達が、動き出すキッカケになる。
そんなプロジェクトになるかもしれない。しかしまだ足りない。
AZI(アジ)|プロフィール
グラフィティアーティスト・アートディレクター
「グラフィティ=落書き」ではなく、「グラフィティ=楽描き」というコンセプトのもと、ジャンルの壁を越えて様々な分野で活躍中のアーティスト。多数のフェスでのライヴペイント、アーティストやスポーツ選手とのコラボレーション、ミュージックビデオや映画でのアート参加など多方面で活躍中。最近では、オーストラリア出身のポップパンクバンドファイブ・セカンズ・オブ・サマー|5 Seconds Of Summer、通称5SOS(ファイブ・ソス)の来日公演におけるメインビジュアル制作など、活動の幅を世界に広げている。詳しいプロフィールや作品はこちらから