犬の脚力を有効活用してみませんか?

文と写真:三井 惇

飼い主さんの横でよくピョンピョン跳びはねている小型犬を目にします。
2本足で身軽に跳びはねたり、全身の力をみなぎらせて4本足ではずんでいたり。
自分の体高より高く跳びあがる彼らの脚力(バネ)はとても秀でています。
トレーニングもしていないのにあんなに跳びあがれるなんて、人間では考えられませんよね。

この跳びあがる動きは「問題行動」とみなされることがあります。なぜかと言うと、犬が二本足で立ちあがったり跳びはねたりする行動は、留守中テーブルの上に置いてあったものに悪戯したり、飼い主が美味しいものを持っているときに跳びついてきたりする行動に繋がる可能性があるからです。自分の目線より高い位置にあるものに興味があるのですから理論的には当然の行動と言っていいでしょう。

しかし、家に帰ってみたら愛犬がダイニングテーブルの上に仁王立ちになって悪戯をしているという図はあまり嬉しくないですよね。そこで、飼い主はテーブルの上に乗っている愛犬を見て「ダメ!」とか「イケナイ!」と言って叱るわけですが、愛犬たちの脚力の使い方にルールをつけることで、叱る回数を減らすことができるかもしれませんよ。

是非活用したい犬の脚力

小型犬の場合は何かあればすぐ「抱き上げる」ことが出来ますが、20キロを超える中・大型犬になると、そうそう抱き上げてもいられません。階段を上る、車に乗る、獣医さんの診察台に上がるなど、様々な場面で上り下りを余儀なくされますが、出来れば自力で上がってくれると人も助かりますよね。もちろん犬の能力を超えるような無理な高さでない場合に限ります。

中には、何も言わないのに勝手に上っている犬もいますが、そういう犬の場合は、こちらから「上がって」や「下りて」などの言葉をかけてから行動に移すように教えていくと事故なども防げます。
最近は自動開閉ドアの車もあるので、声をかけられるまで待つという習慣をつけてあげることは、安全のためにもお奨めしたいところ。

010-1

また、犬も歳をとってくると自分で乗り降りすることも難しくなるので、その場合はどうしても人の介助が必要になりますが、元気なうちは車の乗り降りなど自分でやってくれると助かります。

我が家の初代ボーダーコリーは、当時乗っていたSUV車の後部座席やカーゴスペースに、「アップ」と言えば軽やかに乗っていましたが、12歳を過ぎた頃から自力で乗るのを断固拒否。さすがに70cm近い高さに跳びあがるのは厳しかったのでしょう。おかげで低床スライドドアのミニバンに乗り換える羽目になりましたが、その後はまた自分でスムースに乗り降りしていました。

ドッグダンスでも使うトリック

ドッグダンスでは、犬はハンドラー(人)と一緒にステップを踏むだけだと思われがちですが、実は様々なトリックがあり、中には何かのオブジェの上に上がるというものもあります。
特に小型犬はオブジェに跳び乗ってオスワリをして見せたり、スィットアップ(ちんちん)をして見せたりするととってもキュートなのでよく使います。

010-2

どうやったら跳びのってくれるの?

では、どうやって犬に跳びのることを教えるのでしょうか。
勝手に跳びのってしまうような犬の場合は、その行動が出そうな直前にキュー(言葉の合図)を言い続けていると、そのキューと跳びのることが関連付けられて、言葉を言われると跳び上がるようになりますが、全然そういう気配を見せない犬には、安全に跳びのる方法を一から教えてあげることから始めましょう。

上がって欲しい方へリードを引っ張るという方法は逆に嫌がってその場所が嫌いにならないとも限らないので、出来れば自分から上がれるように誘導していきます。
例えばソファーや車の場合は、家族が先に乗ってから愛犬を呼ぶことから始めます。家族のそばに行きたいと思えば、最初は躊躇していても、しばらく待ってあげると乗れることがあります。なかなか勇気が出せない時は、大好きなおやつやおもちゃを持って誘導する方法もあります。
何度かスムースにとび上がれるようになってきたら、「乗って」や「アップ」などのキューを言ってから誘導してあげると、「上がる」という動きとキューが関連付けられて、車の中から家族が呼ばなくても、キューを聞けば自分から跳び乗るようになります。

010-3

下りるキューもセットで教える

上手に跳びのれるようになってきたら、下りる時のキューも誘導しながら教えていきます。

「上がったら、下りる」というようにセットにするわけです。
車の場合なら、人が先に降りてから犬を呼んで、自分から下りるよう促します。この時、「下りて」などのキューを言ってあげます。このキューも「何かから下りる」という行動に関連付けられていきます。

キューの意味が分かってくれば、ソファを占有されているときに、「下りて」と言えば犬を下ろすことができ、お互い自分の権利を主張し合って攻防を繰り広げる必要もなくなります。
夜寝ようと思ったら愛犬にベッドを占有されていて、力づくで下ろそうとしたら噛まれた。なんてことも無くなりますよ。

010-4

「下りて」の意味が分かってくると、跳びついている犬や、勝手に膝に上ってくる犬に「下りて」というだけで彼らは床の上に下りるようになります。「ダメ!」や「イケナイ!」と言い続けているより犬にとってはわかりやすいのではないでしょうか。
これから寒くなると、ついつい愛犬たちの温もりが恋しい季節になりますが、愛犬の都合だけで勝手に乗ってくるのではなく、「こっち来て~」で喜んでソファや膝に乗ってくれると嬉しいですよね。

是非取り入れてみてくださいね。

ABOUTこの記事をかいた人

三井 惇

ドッグトレーナー(CPDT-KA) ボーダーコリーと出会ってから生活が一変し、現在4頭目と5頭目のボーダーコリーとドッグダンスやオビディエンス(服従訓練)を楽しむ一競技者。