夏は断然、森に犬とこもる!

文と写真:藤田りか子

夏至祭も終わり、7月。夏休みのシーズン。

北欧の夏は輝くように美しい。だがその短かさときたら!だからこそスウェーデン人は、与えられた 夏を貪るように楽しむ。7月から8月初めにかけて、仕事モード完全スイッチ・オフ。3〜5週間のバカンスは当たり前。日本では考えられないが、これでも国は成り立っている。この間、あちこち旅行に行く人も多いが、家族で森のコテージにこもるというオプションは伝統的に人気。それに何と言っても、旅行とは異なり、気軽に犬連れもできる。

不便さを求めて

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湖のそばにコテージを構えれば、当然ボートの楽しみも。 愛犬と夕方の釣りを終えたところ

スウェーデンでは、サマー・コテージなる別荘を所有している人は決して少なくない。日本では別荘を持つこと、というのは何やらブルジョアな響きがある。が、その感覚はこちらにはなく、庶民レベルの定番アイテム。 そして森と湖の国ならでは、森の中あるいは湖畔に建つ簡素で小さな小屋がポピュラーだ。 ここに愛犬も連れて家族皆が短い夏 をゆるりと過ごす。

風呂やシャワーのないコテージは多い。そもそも水道がない、というのはほとんど当たり前(その代わり井戸か湖の水を汲んでくる)、時には電気もないところある。「なんて不便!」と思われるかもしれない。が、大半の人はその不便さをわざわざ求めに、コテージに移り住む。

「楽しむためには、何かがなくてはいけない!(それにはなんか買わなきゃいけない!)」

ではなく

「目の前にあるものをどうやって楽しむか」

という態度。コテージに住んでいるからといって、湖へ出かけて毎日カヤックでアウトドアライフを楽しんでいるわけではない。陽が昇れば起きて、沈めば寝る、という単純な一日を繰り返す。日中コテージ周りの庭を作ったり、 森 を活かして愛犬と楽しく過ごすなど、 環境にどっぷり浸かる。 そしてこの自然に密接した生活から、動物の本質を見るスウェーデン独特の犬観も養われてくるようにも思えるのだ。

もっとも、一旦コテージから出て普段の生活に戻れば、スウェーデン人、多くがスマートフォーンやタブレットを眺めている毎日なのだが!

自然に戻る、犬の本質が見えてくる

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電気がないコテージであれば、ろうそくの光が唯一の灯り。白夜の湖を眺めながら、ウィスキーもチビチビ。

犬とコテージで過ごすというのは、普段よりももっと愛犬が身近に感じられる時でもある。そもそもコテージは狭く(大きいのもあるが)、皆がひとところに集まる。こうなると人も犬もあったものではない。それから普段よりも家から出たり入ったりが多い。トイレが外にあるし、行水するのも外。下水や残飯を捨てに出ることも頻繁。おまけに天気が良ければ庭のテーブルでのフィーカもある。その度に愛犬もやはり付き合ってくれて、一緒に出たり入ったり。日曜大工で明け暮れている時ですら、そばについてもらいながらペンキを塗ったりと夏の仕事に勤しめる。

少々不便な環境であまり物質に頼らず 、何日も家族とそして犬と暮らす、こんなことを続けていると、 考え方も自然なあり方に 戻ってゆく。大人とはちょっと感覚は違うが、犬と子供はまた別の意味でコテージライフの自然さを楽しむ。彼らにとっては、家を 出たり入ったり、という単純なこと、行水も含めて、それらひとつひとつが楽しいイベントとなる。こうなると形式ばったしつけのトレーニングなんかあまりいらなくなる。 犬のほうが「一緒に生活をシェアしようよ!」と私たちにむしろ歩み寄ってくれているのだから。これは先史時代の犬と人の関係をちょっと垣間見ているような感じだ。狩りの時間になったら、犬がどこからともなく勝手に集まってきて人の手助けをする、というような…。

人らしく、犬らしく、生きること。どんなに忙しい現代的な生活をしていても、夏、森にこもることが、スウェーデン人にその大事なことを思い出させてくれるようだ。

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コテージ生活ができない時にやる、「なんちゃって不便生活」。庭にテントを張って寝る(ただし家に入れば電気もあればシャワーもある)

ABOUTこの記事をかいた人

藤田りか子

ドッグ・ジャーナリスト。スウェーデン・ヴェルムランド県の森の奥、一軒家にて、カーリーコーテッド・レトリーバーのラッコと住む。人生のほぼ半分スウェーデン暮らし。アメリカ・オレゴン州立大学野生動物学科を経て、スウェーデン農業大学野生動物管理学科にて修士号を得る。 著者に「最新世界の犬種図鑑(誠文堂新光社刊)」など多数。新しい犬雑誌「Terra Canina(テラカニーナ)」編集及び執筆者