「ま、大丈夫かな」はダメダメっ! 愛犬の暑さ対策は万全の態勢で

文と写真:白石花絵(しらいし・かえ)

梅雨から夏本番にかけて、本当に犬飼いにとっては、面倒な時期であります。雨の日は散歩が億劫だし(毎日2時間行くのがドイツ基準だから頑張らねばならんのに……)、蒸し暑いから短頭種のメルの室温管理は気を遣うし……(ボクサーはじめフレンチ・ブルドッグ、ボストン・テリア、パグなどのみなさん、短頭種はほかの犬種以上に暑さと湿度に弱いから、ほんと気をつけましょうねー。でもほかの犬種でも気は抜かぬように。いつ誰がなるかわかりません)。

皮膚や耳、毛のケアを頑張りたいシーズン

梅雨や夏の季節になるとアレルギーがでて、肌に赤い発疹がでて、カイカイになる犬も多いと聞きます。痒いのは、死なないけれどQOL(Quality of Life:生活の質。私は「命の質」「生き方の質」だと思っている)が下がる。痒いって、集中力なくなるし、掻きだしたら止まらなくなるし……死ぬような病気じゃないけれど、薬を塗ってちゃんと直したい、と自分なら思うよね。犬も同じだと思います。痒いのを放っておかないでほしいなと思います。外耳炎も蒸れてひどくなる季節。これまた痒い、臭い、ひどくなると腫れたり、化膿する。外耳炎も死ぬわけじゃないけど、犬は痒くてイライラして不快だと思う。放置しないで、ちゃんとお医者さんに診てもらってほしいなと思います。犬は言葉は喋れないけど、行動を見ていれば、犬の考えていることはわかるようになってきます。直接的に掻くだけでなく、耳をブルブル降ったり、舐め続けていたり、身体をどこかにこすりつけていたりと、いつもはやらないような行動、妙な動きをしているときは要チェック。よーく犬を観察していればわかるようになります。

それとダブルコートの長毛種も大変な時期ですよね。アンダーコートをちゃんとブラッシングしてすき取り、夏毛仕様にしていないと、下毛が蒸れてこれまた皮膚炎になります。うちの犬はツルピカ、スムースヘアなので(私はちゃんと手入れができないから、スムースヘアしか飼えない。涙)、ほかの毛の長い犬より手入れは楽ですが、スムースヘアだってけっこう室内が毛だらけになるのですから、毛の長い子たちのおうちの(ママたちorパパたち!?)は掃除機かけるのも大変ですよねーーー。いやー、みんなエライと思う。

そのうえ、たとえばトイプーさん(トイ・プードルさんね)は、毎日コーミング(櫛入れ)して、もつれや毛玉ができないようにしないといけない、ってトリマーの友人に聞きました。そのとき「だからあなたはスタンダード・プードルを飼っちゃダメ」と、きっぱり言われました。ガーン。スタンプーのブラウン色、好きなのにぃ(クーパーやワイマラナーと同じような目の色、鼻の色をしている。好みなんです)。ちょっと憧れていた犬種だったのにぃ。しかしながら、私の大ざっぱな性格を知っている友人のアドバイスはたしかに的確。こんな風に毛の手入れのことにも詳しく、真実を語ってくれる人が、全国のペットショップにいれば、毛玉だらけで捨てられちゃうプードルが減るのにね。

ただでさえ毛玉対策が毎日大変なのに、これで雨の散歩で泥などが毛の中に混ざり込んだらよけい手入れに時間がかかる、その大変さは想像できます。でも、それが面倒だからって、梅雨の間はとうぶん(1週間以上!?)散歩にでない、オシッコはトイレシートで済ませるから、っていうのは、よろしくありません。前回書きましたが、動物福祉の先進国なら、その飼い主の行為は愛犬に対して虐待、飼い殺しにあたります。幽閉生活をさせないでね。あ、だからってバギーに乗せて、景色だけ楽しませるのもNGですよ。犬は自分の足で歩いて、筋肉を維持しないと。筋肉があればカバーできていた運動機能が、年とともに年々衰えてしまい、背骨の病気や骨折など別の病気を誘発し、その結果、疼痛が難治性になったり、寝たきりになってしまったりすることがあります。人間が老いたときを想像すればわかりますね。

それにクンクンと外のにおいを嗅ぐのは、脳へのよい刺激で、テレビやスマホのない犬にとっては大事な情報収集タイム。周辺の犬の様子を知り、テリトリーをパトロールする重要な時間なのです。散歩は、排泄のためだけじゃないので、その楽しみを奪わないであげてください。

死ぬこともある怖い熱中症!

さてさて、長雨も辛いけれど、梅雨明けの暑さも辛い。飼い主は帽子かぶって日焼け止めを塗りまくっても、汗で流れてとっくになくなるこの哀れさ。でも飼い主の日焼けなんてこの際どうでもいい、何よりも注意すべきは犬が熱中症にならないよう全力で阻止することです!

今までいろいろな媒体でいわれているので、熱中症が危険なことは、みなさんもよくご存知のはず。しかし! それでもですね、知人の獣医さんに聞いたのですが、6月くらいから9月くらいまで、1軒の動物病院に毎月2~3件は熱中症で救急で運ばれてくる犬がいるんだそうです。地域にもよるかもしれないですけど、これだけ注意喚起されているのに、まだまだ情報を知らない人はいる。そしてその2~3件のうち、1件くらいは重症で、帰らぬ犬(つまり死亡)となるそうです……。熱中症は病気ではありません。飼い主がちゃんと管理していれば、死なせることにはならない事故なのに。

でも実は、私も奥多摩や山梨や房総などで犬と遊んだあと、帰り道に、道の駅やスーパーなどで買い物したいから「ちょっとクパメル、クルマで待っててね~」ということをしたくなります(懺悔の告白)。きっと同じ気持ちの飼い主さんは多いと思う。それでやっぱりいるんですよ、駐車場にクルマの中で待たされている犬たち。ああいう「ほんのちょっとだから」「せっかく県外に来たのだから、新鮮な野菜や特産品が買いたいな」などという気持ちの緩みが、アクシデントの引き金となっていると思います。ううむ、やはりこういうときに、ドッグ・パーキング(暑くない、誘拐されない、ほかの犬や人に迷惑かけない)みたいなのがあるといいんですけどね。ともあれ、寒い季節ならともかく夏場に買い物がしたいときは、わが家では夫を生け贄にして、エアコンをつけたままのクルマに犬と夫を残していきます(夫はまだコストコの店内に入ったことはありません。駐車場の中には長時間滞在しました。彼はコストコの店内に憧れています。ふふふ)。

エアコンなしも厳しいし、寒すぎにも注意

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あんまり夫にその役をさせると夫婦の危機になりそうだし、メルは歩くだけでハアハアがひどくなるので、夏はどうしてもおでかけが少なくなる白石家でありますが、飼い主が会社や取材に出かけるために、家に犬を留守番させるときは、エアコンをつけていくようにしています。そういうおうち、今では普通になってきた(かな?)。でも「犬畜生のために冷房をつけっぱなしなんて、信じられない」「節電しないといけないのに、もったいない」という感覚は、まだ日本に残っていると思います。地方で、屋外飼育している家庭ではよけいにそうかもしれません。

でも都会だと、窓を開けて外出するのは防犯上よくないですから、エアコンをつけざるを得ないという事情があります。低層階はもちろん3階でも4階でもベランダから空き巣が入ってきますから、ベランダの窓を開けておくわけにもいきません。けれども、近年のマンションは気密性が高いので、窓を閉め切ってしまうと室内は蒸し風呂状態。熱中症になる原因は、高温・高湿・風通しが悪い、この3つが問題ですから、もうアウトです。会社から帰ってみると、愛犬が口から泡をだして倒れていたという話を何件か聞きました。飼い主さんのショックを想像すると、胸が痛みます。クルマの閉じ込めだけでなく、自宅でも熱中症になる可能性があるということを忘れないでください。

ただ反対に、冷房のつけすぎで体調をこわす犬もいます。冷房の冷気は下に溜まりますが、小型犬の体高は低い。人間が感じるよりも、犬は冷気に包まれているかもしれません。それなのにサークルやクレイトの中しか動けるスペースがないと、寒くても移動することができず冷えすぎてしまい、下痢をしたり、体調不良を起こすようです。冷房の部屋と、ほどよくぬるい玄関や別の部屋に、犬が自由に行き来できるようにしておくのがベストです。

散歩時、アスファルトを触ってみて

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クーパーは、メルよりははるかに頑丈なので(ポインターですからねー、タフで少々のことではへこたれません。ポインターたるもの、そうでなくちゃ♪ 運動は大変だけどね。涙)、私が朝寝坊して、それから洗濯物を干したあとの、お昼近くの日が高い時間に散歩に行っても、問題なく付き合ってくれます。でもメルにそれをやると、木陰、日陰の下を探して縫うように道を進んでいきます。ベロを最大限ベロ~ンとだして、ついでに鼻から泡までだして、ハアハアハアハアするので、本当にもう「朝寝坊してごめんなさいっ。もう、しませんっ」と反省します。私は、短頭種の飼い主としては失格です。娘にしっかり6時に行ってもらいましょう。

そのかわり、夕方過ぎもまだ暑いですからね。アスファルトの路面をちょっと触ってみてください。昼間の太陽の熱を蓄熱してて、けっこうびっくりするくらい熱いんです。そのため足の裏だけでなく、地面に近い、人間でいう膝下あたりの位置はまだまだ熱気が漂っていたりしますから、日が落ちている時間だからと安心はしないでください。チワワやパピヨンのような小型犬や、ダックスやコーギーのような足の短い犬、そしてパグやボストン・テリア、シー・ズーのような短頭種(鼻ぺちゃ犬)はとくに用心してください。

だから、真夜中の散歩はけっこう悪くないですよ。私は宵っ張りの朝寝坊ですので、深夜の散歩は、お任せくださいませ。夜型の母が唯一お役に立てるシーンでございます。

可愛くちゃんと働いている愛犬のために

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とにかくみなさん! なんだかもう梅雨が終わりそうな勢いですが、今年は、近年の中でいちばん暑いそうです(毎年そう言われている気もするけど?)。散歩は木陰の、なるべく土の上を選んでほしいです。アスファルトの路面より、土や草のある方が熱気もなく、気持ちいいと思います。

そして多めに水も持参して、熱中症にならないように気をつけましょうねー。多頭飼いのおうちはとくに水分は予備のつもりで多めに持参(なくなってしまうと、人間用の麦茶を犬にあげることになる白石家。ニンゲンが熱中症になる恐れあり)。電気代を節約もしたいけど、犬と暮らす必要経費と思ってエアコンをつけてあげるのが親心。空き巣に入られた方がダメージが大きいし。うちのお隣りたちも同じ時期に3軒被害にあいました。空き巣が入らなかったのは、たまたまかもしれないけど、犬を飼っていた6軒中の3軒(うちを含む)。犬はお留守番中、小型犬であっても、ちゃんとアラーム・ドッグとしておうちを守ってくれているらしい。「犬がいる家に入って鳴かれるくらいなら、犬がいない家の方を選ぶものだよ。東京には犬を飼っていない家がいくらでもあるんだから」と、おまわりさんがそのとき言ってました。留守番中は、だらけて昼寝ばかりしているように思えますが、実はちゃんと番犬をしているのかも!(たぶん) 可愛い働く犬が、家庭内で熱中症にならないように暑い日は配慮してあげてくださいね。

ABOUTこの記事をかいた人

白石 花絵(しらいし・かえ)

雑文家、ドッグ・ジャーナリスト。夫1、子ども1、ジャーマン・ショートヘアード・ポインターのクーパー、ボクサーのメル、黒猫のまめちゃんと東京都庁の見える街で暮らす。広島修道大学法学部法律学科卒業、その後広告制作会社でコピーライターを経験したのち、公益財団法人世界自然保護基金WWFジャパンの広報室に勤務。それからフリー。「日本にすむ犬が1頭でも多くハッピーになること。日本の犬がもっと社会から理解され、市民権を得られるようになること」、そのための記事を書くことがライフワーク。著作に『東京犬散歩ガイド』『うちの犬―あるいは、あなたが犬との新生活で幸せになるか不幸になるかが分かる本』、構成・文として『ジャパンケネルクラブ最新犬種図鑑』等。